検索窓
今日:2 hit、昨日:11 hit、合計:471,961 hit

08 安堵、鼓動 ページ9

「へえ、あんな盛大にやッたのに、何事もなかッたかの様に綺麗さっぱりだな」


 彼はそこに怪我をしていたらしい。
 が、樋口と会話している内に、それはなくなった。


「すげェじゃン」


 ーーあの包帯野郎に聞かせたら、どうなるんだろうなァ。


 悪寒を感じ、その思考回路を止めて、
 そんな感嘆する彼に、医療班の一人が話し掛けた。


「報告します。恐らく、芥川総長の怪我・傷等、外的要因によるものは完治したと思われます。脈も一定で」

「お、そーか。本当に完全治癒したんだな
、すげー。止めてもらッていいぜ」

「それが……呼び掛けているのですが、聞こえていないのか、反応がなく……」

「何?」


 彼女の方を見やると、まだ歌っている。


 確か、もう十時間以上歌ってなかったか……?


「おいおい、マジかよ」


 芥川の病室へ通じる扉を勢いよく開け、顔を覗き込んだ。


 こちらに反応せず。


 彼女は歌う。


「確か殴る位しろッて云ってたみてェだな」


 中原は手っ取り早く、


 Aのほっぺたを両手で引っ張った。


 うわ、マシュマロ。
 と、思ったのと同時に。


「ふわえ?」


 気の抜けた声と、目をぱちくりさせるAの顔を見て、中原は笑いが込み上げてきた。


「く、ははッ!おいもういいぜお嬢ちゃん、芥川は全快したんだとよ」

「え!本当ですか!」


 ぱあっと輝く笑顔。
 そして突如、彼女はふらりと倒れた。中原はそれを受け止める。


「おい、どうした?」

「……やー、長く歌ったから、疲れちゃって……でも、芥川さん、元気、になっ、たみたいで、良か……った……で」


 そのまま。


 Aはすうすうと寝てしまった。


「……………………」


 鼓動。


 顔が少し熱い。


 コイツの安堵の表情と、笑顔と、声を聴いたその瞬間。


「マジかよ……」


 中原中也は、


 とても大きな、
 溜息をついた。

09 夕日→←07 交代



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (234 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
799人がお気に入り
設定タグ:中原中也 , 芥川龍之介 , 文豪ストレイドッグス   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - リアさん» リア様、素敵なご感想とご指摘をありがとうございました!全然気付かなかったのでありがたいです。近いうちに修正します!またいつでも遊びに来てくださいませ! (2021年2月2日 23時) (レス) id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)
リア - 少し高圧的でしたかね?不快でしたら申し訳ない…更新頑張ってください!(唐突〜 無理矢理とか言うんじゃねぇ!) (2021年1月31日 23時) (レス) id: bba845c06e (このIDを非表示/違反報告)
リア - 凄く面白いですね!すぐ読み進めてしまいました!少し気になったのですが、34の所で夢主が芥川さんのことを龍之介さんではなく、芥川さんと言っていたのですが、これは意図的なものなのでしょうか?もし意図的にそうしているなら、すみませんが訂正されては如何ですか? (2021年1月31日 23時) (レス) id: bba845c06e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 徒花さん» 徒花様、ご感想ありがとうございます!頑張ります! (2019年6月30日 0時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
徒花 - この作品初めて見ましたが面白かったです!頑張ってください (2019年6月29日 19時) (レス) id: 5d280f12f7 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2019年5月14日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。