治癒の異能を持つ少女はポートマフィアに愛される【文スト】

41　本、福音 ページ42

フランシス・スコット・キー・フィッツジェラルドは鋭い視線を送った。


　当の筧Aが、茫然としているからだった。


「ほん？」

「まあ座りたまえ。モンゴメリ君」

「……はい」


　ルーシーは部屋を出ていった。手に何か、人形みたいなものを持っていた気がする。


「私はフィッツジェラルド、この組合の団長だ」


「筧……Aです」


　Aはそのまま、立ち尽くす。


「ある異能力者が予言した。

　月下の虎の異能力
　――本の道標と成りけり。

　福音の歌の異能力
　――本の在処を歌いけり。

　本とは、このヨコハマに眠っているらしいのだが……」

「ちょ、ま、待ってください」


　突然の情報過多に、Aは一呼吸つける。


「その福音の異能者が、私かは分から」

「君だよ」


　フィッツジェラルドは静かに云う。


「月下の虎の異能も、福音の異能も、大変稀有で、逆に直ぐ情報が手に入った。今は二つとも、この船の中だ」

「！」


　その、もう一人、捕まっている人が？


「あの……私、本のことなんて初めて聞きましたし、ましてや、知らないというか……」

「そうだ、君は知らない。知っているのは君自身、君の異能だ」

「へ？」


　どういうことだろう。
　私は知らない。
　でも、私の異能が知っている。


　今まで歌う時は、
　私の知っている歌しか歌ってない。


　けれど、
　その私が、
　知らない曲を、
　歌っているとしたら。

　それは。


　揺らぐ福音が――歌っているものだから


「もしかして……」

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