39 楽しみ ページ40
夢野久作は無邪気に笑った。
「久し振りのお外! しかも列車! とっても楽しい! 森さんに感謝してもいいかなあ☆」
足をぶらぶらさせ、シートの上で跳ねる彼は、窓の景色を楽しんでいた。
どんどん変わって行く車窓からの眺めは、いつも閉じ込められているあの場所に比べれば、最高のアトラクション。
ピクニック気分で、片脚の人形を抱き締める。
「そういえば、新しい幹部補佐は綺麗なおねえさんだって、誰かが云ってた気がするなぁ」
そして、更に笑んだ。
「そのおねえさんの狂気、どんなものだろう、早く見たいなあ☆」
そんな彼の乗った列車は、もうすぐ箱根に辿り着く。
三社鼎立の、次なる戦地へと。
ヨコハマ某所。
一人の遺体があった場所。
それは異国の者で、ジェームス・ジョイスという名の男だった。
ポートマフィア抹殺の命により訪れたその地で死んだ。
その血溜まりを、大人数が囲んでいる。
黒蜥蜴、樋口一葉、梶井基次郎、中原中也――
実力者揃いの元に、彼らの主が現れた。
すべての者が、跪く。
「かなり先手を打たれたねえ」
血溜まりを踏んづけ、森鴎外は部下達に背を向けた。
「………………」
誰も何も答えない。
皆、他に、首領の一言を待っていた。
「あ。そう云えば、筧A君が誘拐されてしまったねえ。彼女凄く貴重だったのに……惜しい事をしたよね。しょうがないかなあ。それに紅葉君も今、いないしねぇ」
ただの、一人の幹部補佐。
首領はいつだってそう。
敵に捕まったら、人質にとられたら、
その者はもう死んだも同然とする。
無くなってしまった駒ならしょうがない。
わざわざ取り戻そうとも思わない。
いつもならここで終わるが。
恐らく、ここでは終わらない。
何故なら。
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午(プロフ) - リアさん» リア様、素敵なご感想とご指摘をありがとうございました!全然気付かなかったのでありがたいです。近いうちに修正します!またいつでも遊びに来てくださいませ! (2021年2月2日 23時) (レス) id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)
リア - 少し高圧的でしたかね?不快でしたら申し訳ない…更新頑張ってください!(唐突〜 無理矢理とか言うんじゃねぇ!) (2021年1月31日 23時) (レス) id: bba845c06e (このIDを非表示/違反報告)
リア - 凄く面白いですね!すぐ読み進めてしまいました!少し気になったのですが、34の所で夢主が芥川さんのことを龍之介さんではなく、芥川さんと言っていたのですが、これは意図的なものなのでしょうか?もし意図的にそうしているなら、すみませんが訂正されては如何ですか? (2021年1月31日 23時) (レス) id: bba845c06e (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - 徒花さん» 徒花様、ご感想ありがとうございます!頑張ります! (2019年6月30日 0時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
徒花 - この作品初めて見ましたが面白かったです!頑張ってください (2019年6月29日 19時) (レス) id: 5d280f12f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:午 | 作成日時:2019年5月14日 21時