34 無花果 ページ35
夕方。
無事任務を終え、Aの部屋にやって来た芥川。
部屋の前に来ると、ほわんと甘い香りがする。
ノックをした。
「はーい」
その、彼女の声を聞いた瞬間、疲れというものが吹っ飛んだ気がする。
彼女は、恐らく異能を使っていないのに。
どういうことだろう。
「いらっしゃいませ、お疲れ様です!」
扉が開き、その笑顔を見た。
何か、何もかも、邪念というものが消え去った気がする。
なんだ、この感情は。
部屋に入ると、丸いテーブルの上に幾つもの西洋生菓子と紅茶のティーカップ、座っていた銀が立ち上がり、軽く会釈をした。
「さあ、頂きましょう!」
温めていた紅茶を注ぎ、皆座る。
様々な西洋生菓子が並べられている。カラフルな果物の下には、なめらかなクリームや生地が美しく敷かれており、味も種類も豊富だ。
「龍之介さん! 無花果だけが大量に載った西洋生菓子が、期間限定であったんです! ラッキーでした!」
「ありがとう、ございます。頂きます」
「んん〜、美味しい……幸せ……」
ほっぺに手を当てて、喜ぶA。
芥川も、一口すくい、口に含んだ。
美味しい。
でも、いつもと違う。
「Aさん、美味しいです」
「それは良かったです!」
「とても、美味しいです」
「龍之介さんのお陰ですよ〜」
甘い空間の中、兄が今日はいつも以上に無花果を味わっているのを見て、
銀は、少し優しく、微笑んだ。
800人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
午(プロフ) - リアさん» リア様、素敵なご感想とご指摘をありがとうございました!全然気付かなかったのでありがたいです。近いうちに修正します!またいつでも遊びに来てくださいませ! (2021年2月2日 23時) (レス) id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)
リア - 少し高圧的でしたかね?不快でしたら申し訳ない…更新頑張ってください!(唐突〜 無理矢理とか言うんじゃねぇ!) (2021年1月31日 23時) (レス) id: bba845c06e (このIDを非表示/違反報告)
リア - 凄く面白いですね!すぐ読み進めてしまいました!少し気になったのですが、34の所で夢主が芥川さんのことを龍之介さんではなく、芥川さんと言っていたのですが、これは意図的なものなのでしょうか?もし意図的にそうしているなら、すみませんが訂正されては如何ですか? (2021年1月31日 23時) (レス) id: bba845c06e (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - 徒花さん» 徒花様、ご感想ありがとうございます!頑張ります! (2019年6月30日 0時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
徒花 - この作品初めて見ましたが面白かったです!頑張ってください (2019年6月29日 19時) (レス) id: 5d280f12f7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:午 | 作成日時:2019年5月14日 21時