05 星は二物を与えず ページ6
稽古は終わり、今は三人でテーブルを囲んで、茶を飲んでいる。
本日は、栗羊羹を焙じ茶と共に。
みんな、会いに来る度、色んなお土産を持ってきてくれて、それがAの楽しみの一つになっているのだ。
例え、
命令された行動だとしても、
上辺だけでも、
同じ行動には変わりないのだから、
嬉しい。
「Aさん、ちゃんと鍛錬してて偉いなあ。師匠冥利に尽きるっす」
「ほんと?だってね、早く村社のお姉さんみたいにカッコよくなりたいもん!あと暇だし!」
手をぐっと握り、とても楽しそうにお喋りする。
実際、特一級異能者や犯罪者がこの施設から逃亡を図った際に、喰い止めなければならないので、剣術等教えている場合ではないが。
この少女は逃げる気など毛頭なく、加えてまだ子どもなので、何があっても食い止めることはできる。
まあ、まずここから出ることは不可能に等しいが。
そんなことを考慮しながら、村社は笑い掛ける。
「いやあ、武道やってる様には見えない位の陽気振りっすからね」
「お前もな」
「あはは、本当!」
「酷い言い様っすよ」
これでも、政府直属の護衛係と、特一級異能者。
そうは見えない程、明るく和やかな雰囲気である。
「むー、どしたら村社のお姉さんから一本取れるのか……」
うむむと考えると、青木が挙手をする。無言で片手による指名をすると。
「前髪が長く、量も相当だ。邪魔ではないのか?」
「あー」
あんまり気にした事、なかったなあ。
実はそこまで重くないし。
「髪を減らした方が、もっと動きやすくなるぞ」
「いやいや、女の子の髪にとやかく言うなんて、嫌な大人がいたもんすね」
色々言われて、その白髪に一筋、スイーっと指を通していき、そして。
「今度、自分で切ってみようかな?」
美容室にも行けないしね、今は。
出来るかは別として。
「Aさんは何でも自分で頑張って、偉いっすね」
「まあ」
「当時は異能の事など知らなかった上で、地方大会まで行ったのは努力の賜物だぞ」
「んー」
褒めてくれる、
励ましてくれる、
顔色を伺ってくれる、
きっと、機嫌を取ってくれている。
きっと、御先棒を担いでくれている。
こうやって穏和な方が、何も起きない方が、良いから。
きっと子ども相手には、これが一番なのだ。
どの捜査官も言ってくる意見に対し、幼い頃から至極当然と思ってきたことをAは言う。
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午(プロフ) - 凛音さん» 凛音様、コメントありがとうございます!これからも頑張ります! (2019年7月13日 20時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
凛音(プロフ) - いつも読んでいます!とても面白い!私は文ストの中では中也と太宰が好きなんです、これからも頑張ってください! (2019年7月13日 14時) (レス) id: 54808a52f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:午 | 作成日時:2019年6月30日 0時