38 星を見て時夜を求む ページ39
人と触れ合うのは、やはり良い。
人に触れたら、その人の願いが叶ってしまうけれど。
でも、まだ夕方位だから、大丈夫。
夜なんて、来なければいいのにね。
あれ？
夜が来なかったら、太宰さんの願いを叶えることが出来ない。
「私、何を」
私、何を言っているの？
「だーくん、勝手に何処行っちゃうの。ダメでしょ？」
とても優しい女性の声が降ってきた。
母親だ。
彼は、即座に私の手を離し、抱きついて行った。
「あら、お姉さん遊んでくれたのねぇ。ごめんなさいね」
「い、いえ」
「だーくん、お姉さんにありがとうは？」
くるりとこちらを向くつぶらな瞳。
「おねえちゃん、だれかまってるんでしょ？」
「え」
「はやくきてくれるといいね、ばいばーい」
「ばいばい……」
母親に合わせて会釈し、子どもには手を降った。
あいすたべよー。
あのおねえちゃんかなしそうだったから、いっしょにいてあげたんだよ。
ね、あいす！
高々と、嬉しそうな声が聞こえてくる。周りの喧騒さをものともせず、それしか聞こえて来ない。
悲しそうだった。
え？いやいや、ショー楽しいよ？
イルカ超可愛いし、
ペンギンは歩いているだけで癒やしだし。
アシカの技術力には目を奪われるし。
面白いものを観ていても、
楽しくても、
心が満たされていないのは、
「太宰のお兄さん、まだかなあ……」
あの人が、いないから。
中原さんと話を付けてくる、大人の話をね。
そう言って、ここで待つように言われた。
大人のお話。
あの中原さんって人、多分高校生位だと思うけれど……政府の人なんだ、凄いな。
何か特別な力があって、
何か特別な思いがあって、
若いながらも、ああやって、自分の力を使っている。
凄い。
私は平凡な女子高校生だったし、
異能も、何でも叶える割には夜にしか使えないし。
もう、
本当に、
あの箱の中位しか、私の居場所は無かったのに、なあ。
でも、戻らないし。
でも、
でも。
駄目かな、
駄目かな、神様。
私は、
私は。
ざわっとした。
人々の視線、声の方向から、ステージの方を顔を上げると。
何かが降ってきて、
丁度、アシカの頭の、上に乗ったのは。
お洒落でカッコイイ、
あのお兄さんの、帽子だった。
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午(プロフ) - 凛音さん» 凛音様、コメントありがとうございます！これからも頑張ります！ (2019年7月13日 20時) (
レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
凛音(プロフ) - いつも読んでいます！とても面白い！私は文ストの中では中也と太宰が好きなんです、これからも頑張ってください！ (2019年7月13日 14時) (レス) id: 54808a52f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：午 | 作成日時：2019年6月30日 0時
