36 奈落の星 ページ37
どれだけ、人と生きていてェんだよ。
俺や、芥川や、
織田や、
虎のガキ、泉鏡花、
本当に、胸糞悪い。
ムカつく野郎だぜ。
太宰治がこの世から消える事は願ってもない事だが。
太宰治の願いが叶う事は、なんかムカつく。
「何が太宰を、動かしていんだ」
「君でない事は確かだよ、中也」
ゆったりと。
薄暗い熱帯魚の水槽裏から出て来た男。
声を聴いただけで苛々する。
顔を見ただけで苛々する。
同じ空間にいるだけで苛々する。
そして、
今も又、オレの前に立ちはだかる。
腹が立つ。
腹が立つ。
「石Aは何処だ」
「中也なんかの手が届かない、光の世界」
「それは手前ェも同じだろ」
両者、目線を真っ直ぐ外したまま、動か
ず。
「ね、中也。安吾の名前が出て来たってことはさ、彼女は、本当に」
「…………」
「ちょっと、別に意味もない守秘義務働かせるの止めなよ、今は政府の人」
分かっている。
否、
分かっていた。
彼女の言っていた、ハコの意味。
絶対に出られない箱。
絶対に破られない檻。
絶対に壊されない籠。
何故、私達は、出会えたのだろう。
今まで見てきた人間の中でも、
今まで出会った人間の中でも、
違う。
それは稀有な異能を持っているからか、
それとも。
それとも。
「……いいか、石Aといても、不幸になるだけだ。良い加減」
「君に何が解るの。どうせ詳細も聞かずにとにかく連行だけを成し遂げようとしているんでしょ？うわあ」
「手前ェは解るのかよ」
「……………」
「まあいい」
両手を開き、帽子を押さえ、
「太宰治を抹殺し、
石Aを奪還、
俺の願いが二つ叶う、またとない絶好の日が、今日だ」
ニヤリと笑った。
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午(プロフ) - 凛音さん» 凛音様、コメントありがとうございます！これからも頑張ります！ (2019年7月13日 20時) (
レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
凛音(プロフ) - いつも読んでいます！とても面白い！私は文ストの中では中也と太宰が好きなんです、これからも頑張ってください！ (2019年7月13日 14時) (レス) id: 54808a52f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：午 | 作成日時：2019年6月30日 0時
