29 星を懐いて罪あり ページ30
「大きい……広い!」
二人は今、水族館にいた。
動物園に行くはずだったが、道すがら見つけたので、寄ったまでのこと。
大きな大きな水槽の前。
色とりどりの魚達と、幾重にも重なる植物、魚介類も揺蕩っている。
照明や音響の効果も発揮され、とてつもなく神秘的な世界に、二人で入り込んだ。
薄暗い中、平日なので、客も多くない。
「海の中、だね」
「そうだね」
「お魚、蟹、美味しそう」
「そうだね?」
「ううっ」
ぷるるっと、Aが肩を揺らす。気温と室温が低いのと、水色の中の雰囲気で、とても寒く感じる。
「寒いねえ。この寒さの中では、死にたくないねえ」
太宰さんは、自らの長外套を掛けてくれた。
あたたかい。
生きている心地がする。
「ありがとう、ごめんなさい」
そう言うと。
「謝らなくて、いいんだよ、君は」
と言われた。
本当だ、どうして謝ったのだろう。
太宰さんに悪いと思ったのか、
それとも。
私にそんな資格はないと思ったのか。
「ふふふ」
誤魔化す様に、私は長外套を翻らせる。
「なんだか悪い事しているみたい。ポートマフィアみたい」
ぐるぐると回った。
とても無邪気に、
とても、天真爛漫に。
とても、天衣無縫に。
実際に見たことないけれど、
ポートマフィアは悪い人達。
だから子どもの頃から悪さをすると、
ポートマフィアになっちゃうよとか、
ポートマフィアに連れて行かれるよとか、
家族でも友達間でも、教訓の様に言われるのが、日常茶飯事だったなぁ。
「Aちゃんの様な優しい善い子が、ポートマフィアな訳ないよ」
太宰さんが笑いながら、言ったけど。
「善い子じゃ、ないんだよ、私」
そこは部屋一面、クラゲで覆われた部屋。
今月のフェアらしく、色とりどりの、様々なサイズのクラゲが、多様な形の水槽の中で、プカプカ漂っている。
「私は、善い事だと思って、悪い事をし過ぎたの。だからね、そうなの」
「………………」
「知らなかっただけだけど、それでも、悪い事をしてしまった。だから今、悔いている」
ニコリと微笑んだ。
「それが私の、罪と罰」
「罪と、罰?」
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午(プロフ) - 凛音さん» 凛音様、コメントありがとうございます!これからも頑張ります! (2019年7月13日 20時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
凛音(プロフ) - いつも読んでいます!とても面白い!私は文ストの中では中也と太宰が好きなんです、これからも頑張ってください! (2019年7月13日 14時) (レス) id: 54808a52f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:午 | 作成日時:2019年6月30日 0時