検索窓
今日:6 hit、昨日:0 hit、合計:111,797 hit

27 雨垂れ、星を穿つ ページ28

「そっちの方が、良いじゃない?やっぱりさ」


 Aは続ける。


「悪い事よりも、良い事の方が、善いじゃない」


 Aは続ける。


「悪い人よりも、善い人の方が」


 笑って。


「幾らか、素敵だよね」


 と。


「太宰のお兄さん?」


 ハッとした風の彼の顔を覗き込む。
 今まで見た事のない、少し余裕のない、そんな表情をしていた。


「大丈夫?」


 立ち上がり、傍へ駆け寄り、しゃがみ込む。
 太宰の瞳にAが映ると、何を考えていたのか、


「…………えっと」


 太宰さんは聞いてきた。


「Aちゃんさ、カレー、好き?」


 かなり唐突な質問だった。

 苦し紛れっぽい?
 そんな感じの。

 でも。


「うん、大好き!」


 素直に答える。


「毎週金曜日はカレーの日でね、その日だけ、いつも私が作るんだよ!」


 呼び起こされる思い出を語る時、とてもとても、幸せな気持ちになるのはどうしてだろう。

 どうして。


「へー、じゃあ今日だったんだね」

「え……」


 そう、なんだ。
 なんとなく、分かってはいたけれど。

 曜日の感覚なんて、もう殆ど無かった。


 そっか、今日、カレーの日だったのか。


 いつから、作っていないのか。
 いつから、食べていないのか。

 いつから。


「よし分かった」


 立ち上がった太宰さんを、ボーッと目で追った。

 
「今日の夕飯は、最後の晩餐は、カレーにしよう!」


 輝かしい、けれどもとても気持ちの良い笑顔。
 

「金曜の夜はカレー、ね?幾分か素敵だろう?」

「……太宰のお兄さんは……カレー、好き?大丈夫?」


 やっと出た声で、震えを抑えながらAは聞く。


「人生最後の晩餐がカレーで、Aちゃんとなら、文句等無い!」


 優しさが、伝わって来て。

 熱くなる目頭を押さえながら、私は言った。


「――辛いのが、いいな」

28 星の噂も七十五日→←26 禍福星による



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (108 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
280人がお気に入り
設定タグ:文豪ストレイドッグス , 太宰治 , 中原中也   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - 凛音さん» 凛音様、コメントありがとうございます!これからも頑張ります! (2019年7月13日 20時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
凛音(プロフ) - いつも読んでいます!とても面白い!私は文ストの中では中也と太宰が好きなんです、これからも頑張ってください! (2019年7月13日 14時) (レス) id: 54808a52f2 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2019年6月30日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。