19 泥中の星 ページ20
「まあまあ、私たち、どうせ今晩には死ぬんだから、関係ないよ」
「あ……」
そうだった。
あそこにも、戻らないのか。
深月ちゃん、安吾君、村社さん、青木さん……異能特務課のみんな、
学校のみんな。
お母さん、
お父さん。
もう、戻らない。
うん。
そうだよ。
この異能を無くす為に、
私は今日、
愛しい人と、最期を迎えるから。
「じゃあAちゃん、最後の仕上げ」
「え?」
太宰さんの手が髪に触れたかと思うと、
ぱちん。
何か、付けてくれた。
「それは私からのプレゼントだよ」
そこにあった鏡を覗き込み、確認すると。
白い波の中に浮かぶ、一輪の花。
桃の花の髪飾りが、咲いていた。
そよそよと風に舞い、綺麗な色で。
「可愛い……」
「気に入った?」
「とっても……!」
ああ、ああ。
嬉しい気持ちが、止まらない
止まらなくて、溢れそう。
「太宰のお兄さん」
「ん?」
手を繋いだ。
「次は、何処に連れてってくれるの?」
首を傾けて、Aは尋ねる。
太宰はんーと思案し、言う。
「Aちゃん、行きたいとこ、ある?」
質問返し。
私の、行きたい処。
「えっと」
見たことあるけれど、
行ったことのない、
本当にあるか、分からない処。
「あのね」
今日は、デートだから。
人生で初めての、
人生で、最後の。
「パンダを、観に行きたい。
あと、蟹、食べたい」
太宰さんは、
了解、と、
なんだか嬉しそうに、
微笑んだ。
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午(プロフ) - 凛音さん» 凛音様、コメントありがとうございます!これからも頑張ります! (2019年7月13日 20時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
凛音(プロフ) - いつも読んでいます!とても面白い!私は文ストの中では中也と太宰が好きなんです、これからも頑張ってください! (2019年7月13日 14時) (レス) id: 54808a52f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:午 | 作成日時:2019年6月30日 0時