11 星は万代の宝 ページ12
太宰治が目を覚ますと、知っている港近くの公園にいた。
昨夜は遅くまで飲み過ぎた。
どうしても、あの美人さんを口説き落として一緒に心中したかったのに。
「そしてだぁれも、私を迎えに来てくれない」
頬を膨らませて怒りを顕にする22歳男が、そこにいた。
「いやーそれにしても、空が下、海が上にある眺めも久し振りだね」
何故そんなことになっているかと言えば、彼が引っくり返っているからである。
風が柔らかく心地良い。
「善い朝だなあ、こんな日は職場に行かないのが筋というものだ……んん？」
よく見れば、視界の端っこで白いモノが動いた。
それは白く長い髪で、キラキラと光っている。
「敦君以上に真っ白け」
先日、ヨコハマという街を北米組合から守った後輩を思い出し、迎えに来てもらおうと思い立ったが、携帯が見当たらない。
「店……替えのもない……私ったら、うっかり」
そしてその白い者は。
目から涙を零し、太陽に包まれていた。
全てがきらきらと光り輝いている。
「わぁ綺麗」
星みたい。
遥か昔より、空なんて見上げたことは殆どなかったし、星なんか興味なかったからか。
眩しい。
私には、眩し過ぎる。
黒い闇には、耐えられない。
しかしそれが、美しい少女だと判るや否や。
「あの子と心中したら、ふわふわきらきらの中で死ねるのだろうか」
いいなあ、その雰囲気。
その世界の終わり方。
「異能力なんて、なくなればいいのにな」
む？
異能という言葉。
考えてもみれば、早朝から一人公園で座り込む女の子。
あらら、訳有かな。
家出かな？
それにしても、異能力が無くなればいいなんて、
同じ様な考え方をする人、
意外と多いんだなあ。
と。
その少女が振り返る素振りを見せたので、瞬時に目を閉じ、太宰治は狸寝入りを始めた。
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午(プロフ) - 凛音さん» 凛音様、コメントありがとうございます！これからも頑張ります！ (2019年7月13日 20時) (
レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
凛音(プロフ) - いつも読んでいます！とても面白い！私は文ストの中では中也と太宰が好きなんです、これからも頑張ってください！ (2019年7月13日 14時) (レス) id: 54808a52f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：午 | 作成日時：2019年6月30日 0時
