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10 掌中の星 ページ11

心中?


 心中って、自分を殺すってこと?

 素晴らしき愛の中って、愛し合いながら、最後は愛の中で、死ぬってこと?


 好きな人と、
 好きな人に想われながら、

 共に終える。


 なんだそれは。

 それは。


 寂しい最期より、
 悲しい最期より、
 残酷な最期より、
 

 それは、一番良い、死に方だなあ。


「お兄さん、死にたいの?」

「そうですよ」

「なんで?」

「え」


 Aの問いかけに、その笑みが一瞬引き攣った。


「えー、そうだねえ」

「………………」


 片手で頭を抱え始めたのを見て、
 直ぐに解答がないことで、


 ああ、そうか。


 多分この人、色んな人に同じ台詞を言っているけれど、


 本気なのに、


 断られるか、テキトーに流されるか、貶されるかくらいしか、されないんだろうなあ。


 本気なのに。


 なんだかそれは、
 可哀想。


「はあ」


 溜息をついてしまう。

 こうやって、可哀想とか、助けてあげたいと思ってしまうから、異能を使ってしまっていた。

 異能力だと発覚してからは、使わないように、していたけれど。

 よし、いっか。


 死にたい、というのが願いなのならば。

 この異能を消したいという私の願いとも、
 一致する。


「太宰のお兄さん、その願い、私が叶えてあげるよ」


 この人で、最後にしよう。


「え?」


 太宰さんは、その問いかけに答えぬまま、吃驚顔になり、私は彼の手を握った。

 未だ朝だから、触れても大丈夫。


「私、人の願いを叶える異能が使えるの」


 この人で、最後にしよう。


「へえ、異能。異能ってことは、Aちゃん異能力者?私、初めて見た」


 太宰さんはそのままの微笑みで、手を握り返してきた。

 流石、これから死ぬことを分かっている人は、肝が座っている。


 この人で、最後にしよう。


「でもね、私の異能、夜にしか発動しないの。それまで待てるかな」

「分かった」


 太宰さんは立ち上がった。

 高い背、大きな手、優しい眼差し。
 ああ、いいな、と思った。


 そして矢張り、可哀想とも。


「ではそれまで、私とデェトしようか、Aちゃん」


 この人で、最後にしよう。


 人の願いを叶えるのは。
 人の望みを遂げるのは。

 人の目的を果たすのは。
 人の夢を実現するのは。


 人の命を、奪うのは。


 この人で、最後に――――

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 太宰治 , 中原中也   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 凛音さん» 凛音様、コメントありがとうございます!これからも頑張ります! (2019年7月13日 20時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
凛音(プロフ) - いつも読んでいます!とても面白い!私は文ストの中では中也と太宰が好きなんです、これからも頑張ってください! (2019年7月13日 14時) (レス) id: 54808a52f2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年6月30日 0時

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