織田作之助と真っ白な頁の波に漂う【文スト】

49　夜 ページ49

「どうぞ」

「ん」


　一口食べた。
　柔らかく、噛める程度に残っている、ホロホロと溶けていく牛スジ。
　玉ねぎの甘みに、赤ワインのコク。


「善い辛さだ」


　その手は止まらず、然しふと、窓の外を眺めた。


「でしょうでしょう」


　Aも釣られて、窓の外の、海を見た。


　遠くだけど、その碧が綺麗で、
　キラキラ光っていて、


　海の見えるその部屋まで、


　全てを包み込んでくれるような波音が、聴こえて来る様な気がした。












　さぁ、今日も、




　どんな素敵な物語を、




　君と紡いで行こうか。




　君と歩いて行こうか。




　願い、別れ。
　決して交わる事の無い世界でも。


　本にしても、しなくても、


　事実は小説より、可笑しくても、


　
　過去も、
　未来も、
　現在も、



　しがない、末端も末端の、なんて事ない、詰まらない、どうしようもない私でも。


　水底に沈んだ私を引き揚げてくれた、


　一緒に、いてくれる人の為になら。


　否定されても、
　傷付いても、
　誇りを失っても、


　書いて行きたいから。


　生きて行きたいから。


　さぁ。


　朝が来て、


　夜が来て、


　また、陽は昇ってーーーー


　今日は、
　その真っ白な頁を、人生を、


　どんな文字で、


　どんな文章で、


　どんな物語で、刻んでいこうかーー？












〈お了い〉

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