社会人とイヴ ページ4
二人は横断歩道を渡ってくる。潤一郎さんが与謝野さんに尋ねた。
「こんにちは。お二人は買い出しですか？珍しい組み合わせですね」
「嗚呼、今日は敦がいないからね。でもまさか、此処でアンタ達に会うとは思わなかったよ」
「あはは。用事が終わったもので、ちょっとこの辺りをナオミとふらついてたんです」
思ったより早く終わったから、今からでも出社するかちょっと悩んでたんですよね、と潤一郎さんは当たり前のように言う。
私はこれまでの人生での本業が幼児→学生→孤児院→盗賊団だしそもそも未成年だしで社会人未経験なので軽く戦慄した。休みを取ってるのに出社するの……？
「今日はそんなに仕事も多くないし、無理に出社する必要はないさ。適度な休息は大切だよ」
「与謝野センセイも、たまには医者っぽいこと言うんですね……」
「谷崎。たまにはってなんだい？」
「あ、あっはは、特に深い意味なんてないですからっ」
「割には視線が凄く泳いでるけど」
セ、センセイの
「さ、A。まだ買うものは残ってるしそろそろ行こうか」
与謝野さんが此方を振り返って手招きする。彼女が二人にじゃあまた明日と手を上げたとき、ナオミさんがちょっと待ってくださいと呼び止めた。
「よかったら、ナオミ達がお手伝いしますわ！ねえ兄様」
「そうだね。お二人の荷物も重そうですし……これから別の店を回って、探偵社に帰るのは大変でしょう」
いいのかい？と与謝野さんが目を丸くすると、二人は笑顔で頷いた。
「じゃ、お言葉に甘えさせてもらおうか。これとこれと……」
「はい！えっとこれと……お、重……」
「それからこっちも頼んだよ」
与謝野さんはほぼ全部の荷物を潤一郎さんに手渡すとぐっと伸びをした。潤一郎さんは、センセイは遠慮がないですね……と両手に袋を引っ提げて苦笑いしている。
「Aちゃん、こちらの荷物はナオミに任せてくださいな」
向こうの二人に気を取られてるうちに、ナオミさんが私の右手のビニール袋をすっと取ってしまった。彼女はにこりと微笑む。
三人は薬品店に向けて歩き始めた。私も追いかける。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 85人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ふわふわありす | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/inotaku093312/
作成日時：2023年11月16日 21時
