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【降誕祭】魔人のヨルカに召された少女 ページ25

もっと目を近付ける。車の行き交う道を挟んだ向こうに、大きな大きな硝子窓が見えた。硝子窓の向こうは部屋になっていて、天井まで届きそうな木が立っている。頭にきらきらの星を自慢げにつけているもみの木(クリスマス・ツリー)だ。


 (ツリー)にはあかりや金紙、それから砂糖菓子の(ベル)だの焼き菓子だのがどっさり吊る下がっていて、脇には赤と金のリボンに包まれた贈呈箱(プレゼント)がぎっしり並べられている。


 そこまで見て、私は今日が降誕祭前夜(クリスマス・イブ)であることを思い出した。

 もこもこのコートを着た子どもたちが部屋中駆け回って、遊んだり踊ったり食べたり飲んだりしている。そのうち木の下の贈呈箱のリボンを解いて笑い始めた。


 思わずじっと見入ってしまったが、反対の廃倉庫に迎えを待たせてるのをはっと思い出してその場を離れた。駆け足で向かって、はあはあと息を上げて廃倉庫の中を覗くと、案の定ゴーゴリさんが暇そうにドラム缶の上に座っていた。

 入口から顔だけ出す私の存在に気づくと、彼は髪を弄る手を止めてひょいと飛び降りた。


「やっと来たね!さあ帰ろうか」


「はい」


 ゴーゴリさんは外套を大きく広げた。軽くしゃがんでその外套の内側を通ろうとすると、ゴーゴリさんは思い出したように穏やかな低い声で言った。


「そういえば今夜は降誕祭前夜だね。いつもより戻って来るのが遅かったけど、何かあったりしたのかな?」


「……大したことは、無かったですよ」


「ふーん?でもそういう言い方するってことは、小さいことはあったんだねー?」


 一転して、いつも通り笑顔の勢いづいた声で話しながら、ゴーゴリさんは右手で(ステッキ)をくるくる回す。言い当てられてしまった私が押し黙っていると、彼はキョトンとした顔でパシッと杖を掴んだ。


「え、え〜〜?本当に何かあったの?大丈夫?君がドス君以外に感情を見せるなんて大事件だよー!?」


「私ってそういう認識なんですか……」

 言われてみれば私はフョードル様以外のことはあまり覚えてないくらいには無関心だけど、それ以前に私とゴーゴリさんは大して仲良くないし、それは当たり前では……。


「……ま、話してほしいとは言わないよ。第一、君の話を聞いても私になんの利点(メリット)もないからね!」

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作者名:ふわふわありす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/inotaku093312/  
作成日時:2023年11月16日 21時

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