おつかいへ行くイヴ ページ22
それにしても、私にナオミさんに鏡花に宮沢さん……みんな社会的に未成年だ。偶然なのか理由があるのか。
私達みんないい年頃だから別に平気だけど、あくまで会社のおつかいだし一人くらい大人が必要なのでは?
同じことを思っていたのか、中島さんと潤一郎さんが同行しようと名乗り出た。しかし江戸川さんは即座に
「だーめ!二人には仕事が沢山あるんだから」
と却下した。一瞬緑色の瞳が鋭くキラリと光って見えたのは、気のせいだと思うことにしよう。
江戸川さんはぴょんと椅子から飛び降りるとこちらにスタスタ歩いてきた。私の両手を広げさせると、右手にはお札を、左手には数枚の硬貨を乗せた。
「はいっこれお金ね。それから……左のはお小遣い」
「お小遣い?何の為に?」
「好きなもの、一人ひとつずつ買っていいよ。特別だからね?」
江戸川さんの顔を見上げる。いつもと変わらぬ悪戯っぽい笑みなのに、不思議といつもよりお兄さんに見えた。
他のみんなも嬉しそうで、ありがとうございますとお礼を言っておつかいに出発した。最年長ということでナオミさんが一応保護者らしい。
「駄菓子はいつもここで買う」
鏡花達について行って辿り着いたのは、こじんまりとした駄菓子屋だった。素朴な木製の建物で、手作り感の溢れる看板が打ち付けられている。
ヨコハマの通りに、こんな穏やかで風情あるお店があるなんて知らなかった。
店前で熊手を持って掃除をしていた、店主らしきお婆さんが「いらっしゃっい」と笑った。目尻に刻まれた細かいしわが、この人の穏やかな人格を表していた。
幾度も来ているのか鏡花達とは顔馴染みのようで、楽しそうに言葉を交わしている。どこか疎外感を感じていると、お婆さんは私の方に顔を向けた。
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作者名:ふわふわありす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/inotaku093312/
作成日時:2023年11月16日 21時