女医とイヴ ページ3
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与謝野さんは買い出しの一覧表を眺めていて、私はそんな彼女の一歩後ろから着いていく。いつもと同じ道を歩いているのに、中島さんと行く買い出しとはまた全然違う雰囲気だ。
「あとは……医療品だね。包帯だとか薬に綿、色々教えるからしっかり覚えなよ」
「はい、分かりました」
……包帯。ふっと太宰さんの顔が浮かぶ。明らかに必要以上の包帯を常に巻いていて、部屋にも結構ある。そのお陰か、包帯選びに関してだけは謎に自信が湧いてきた。
「アンタは太宰と一緒だから、包帯は結構見る機会も多いんじゃないかい」
「与謝野さんは凄いです。今正にそのことを考えてました」
「妾で凄いなら、乱歩さんや太宰なんて人間卒業だよ」
笑う与謝野さんに釣られて、私も思わず口角が上がる。
「そういえば、太宰といえば。二人暮らしになって結構経つけど、どうだい?」
「……そこまで悪くないですよ」
「アンタ意外と分かりやすいね。凄いしかめっ面だよ」
「う……だって太宰さん、全然家事能力ないんですよ。そもそも何故太宰さんの部屋なんですか」
女の人がよかったです、与謝野さんとか。と、そこまで言って私は口元を抑えた。仮にも居候に近い私がこんな我が儘口叩いていいはずない。ちら、と与謝野さんを見ると
「可愛いこと言うねえ。ま、太宰はそういう奴だし仕方がない」
流石に男の人と同居にしたのは申し訳なく思ってる、と苦笑していた。その与謝野さんの態度に甘えて、私もまた苦笑いした。
「あら、あちらにいるのは与謝野さんとAちゃんじゃありませんこと?兄様」
車道を挟んで向かいの道から、聞き覚えのあるあの可愛らしい声が耳に届いた。それに兄様、というからには間違いない。
「ナオミさん」
案の定、そこにはナオミさんと潤一郎さんがいた。いつものセーラー服と萌え袖セーターを着ている。ナオミさんが此方に手を振って、与謝野さんも振り返したから私も小さく手を振った。潤一郎さんも微笑みながら、セーターの袖を揺らして手を振っていた。
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作者名:ふわふわありす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/inotaku093312/
作成日時:2023年11月16日 21時