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懺悔するイヴ ページ14

外に出ると随分と時間が経っていたようで、街は鮮やかな橙に染まっていた。烏が鳴き、居酒屋はそれを目覚ましに明かりを付け始める。



「思ってたより、アンタって強い子なんだねぇ」



 与謝野さんがケラケラ笑う。そして真剣な顔で、私の額に人差し指を添えた。



「でも、命は大切にしないといけないよ。他人のも、アンタのも」



 バチンと指で額を弾かれる。所謂『デコピン』は思いの外痛くて、思わず声をあげて額を押さえた。



「よ、与謝野さん。痛いです」


「自分の命を無下にした罰さ」



 相手の男も、殺すところだったろ。与謝野さんはぴしゃりと言った。その言葉に自分がしてきたことの重さを思い知る。



「……ごめんなさい」


「ん、分かればいいンだよ」



 それは男だけでなく、今まで殺してきた人達にも向けた謝罪。もちろんそんな意味、私以外に伝わるわけがない。



「アンタはまだ若いから……間に合うさ」



 そう言う与謝野さんの目はどこか憂いを帯びていた。何か声をかけたくなったけど、私の手はきっと与謝野さんの何倍も汚れてるんだと思うと何も言えなくなった。



「Aちゃん、とっても強かったです!ナオミびっくりしちゃいましたわ」



 ナオミさんは優しい笑顔を浮かべた。失望されてないこと、嫌われてないことに胸の内で安堵した。

 ナオミさんも潤一郎さんも何故か優しい表情をしていた。不思議に思っていると、潤一郎さんが口を開いた。



「Aちゃんも、妹の為だったンだよね?……ボク達、案外似た者同士なのかも」



 なんてね、と誤魔化すように潤一郎は笑った。その言葉に目を見開く。確かに、妹を想う私と潤一郎さんは似ているのかもしれない。

 でも、潤一郎さんの手はきっと暖かくて……私の手は真っ赤だ。



「月羽、っていうんです。妹の名前……あの女の子みたいに、黒髪に青い目をしていました」



 私は白い髪に赤い目で、そういえば妹とまるで似てなかったなと思い出す。黙り込んでいると、その静寂を切り裂くようにナオミさんがぽつりと呟いた。

帰ろうよイヴ→←被告人イヴ



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作者名:ふわふわありす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/inotaku093312/  
作成日時:2023年11月16日 21時

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