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おはようイヴ ページ12

「A!!」






 はっと夢から醒めた。与謝野さんが私を後ろから強く抱き締めて、動けないようにしていた。男は潤一郎さんに羽交い締めにされ、そのままやってきた警察に連れてかれてく。


 私の手の中にナイフは無かった。抜き取ったのか、与謝野さんの手の中にあった。

 右に顔を向ける。ナオミさんが、女の子をお母さんのところに連れていっていた。お母さんが泣きながら女の子を抱きしめる。



「A、アンタはよく頑張ったよ」



 だから、落ち着いて。与謝野さんの優しい声が聞こえる。


 警察に連行される男の腕は血塗れで、首筋にも赤い線が入っていた。……そうだ、私がやったんだ。混乱していた頭が落ち着きを取り戻していく。


 私が女の子を後ろに引いて、私が男からナイフを抜き取って、私が男を殺そうとした。

 私が男の首元にナイフを当て本気で斬ろうとして血が滲んだ。それを防ごうとした男の腕を何度も何度も刺した。


 改めて見ると男は出欠多量からか意識が半分飛んでいた。救急車を呼んだのか、向こうからサイレンが聞こえて来る。男は警察に応急処置を施されていた。


 ふと、ナオミさんがこちらを見ているのに気づいた。そちらを見るのが怖かった。
 さっきの行動を怖がられた?こういうことができるって黙ってたことを失望された?何故こういうことができるのか疑われた?


 もしそういう負の感情を向けられていたら。そう考えると酷く怖くて、きっと私は堪えられない。ナオミさんの目を見るのが怖かった。




───なんで?ナオミさん(探偵社)は、私にとって憎いものなのに。



 そういえば私は、ナオミさんを一度助けようとした。潤一郎さんによって憚られたけど。


 私は何がしたいんだろう。フョードル様の力になりたい?二人に復讐したい?それとも探偵社の人達と



「あの」



 女性の声によって思考が途切れる。顔をあげると、あの黒髪青目の女の子と母親が立っていた。



「この子を助けてくださって、ありがとうございました」



 え、と声を漏らした。与謝野さんの腕が離れ、そっと私の背中を押す。


 親子と私とで向き合う。その感謝の言葉は私に向けられていた。

被告人イヴ→←不倶戴天、イヴ



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作者名:ふわふわありす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/inotaku093312/  
作成日時:2023年11月16日 21時

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