不倶戴天、イヴ ページ11
気がついたら身体が勝手に動いていて、ナイフを男に突き付けていた。何処から手に入れたナイフだ、これは?そうだ、男から奪ったんだ。
女の子は私の背に隠れて静かに涙を流している。何で女の子が後ろに?そうだ、私が女の子をこっちに引っ張ったんだ。
ナイフを首元に当てようと男を見上げると、男は泣いていた。しかしたった今恐怖で泣いた訳ではないようで、目元には渇いた涙の跡も残っていた。唇が微かに震えている。
は?なんで、貴方が泣いてるの?
泣きたいのは私だよ、お母さん死んでお父さん死んで龍彦さん殺されて月羽殺されてなんで私が泣いちゃ駄目で貴方が泣いてるの?
私は泣いちゃ駄目?どうして?そう、フョードル様がそう言ったから泣いちゃ駄目。我慢しなさい、今は悲しみに暮れるときではありません。もう充分泣いたでしょう?恨み、憎みなさい。
そうだ、恨み憎めばいい。フョードル様がそう教えてくれた。
嫌い、大っ嫌い。私から全部全部奪った。最後の家族も奪った。
許せない、殺してやりたい。なんで私に優しくするの?贖罪のつもり?
ずるい、羨ましい。私は苦しんでるのに、殺人鬼の貴方は幸せなのね。
酷い、惨い。段々気付いてた、本当の貴方は優しいってこと。あれは『仕方なかった』ってやつだったこと。
悲しい、寂しい。私がやってる行為が、あいつらより最低なんて嘘に決まってる。私はもうひとりぼっちじゃないに決まってる。
辛い、憎い、苦しい、恨めしい、消えちゃえ、死んじゃえ、死んでしまえ!!
────誰に死んでほしい?
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作者名:ふわふわありす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/inotaku093312/
作成日時:2023年11月16日 21時