生真面目なイヴ ページ2
探偵社への潜入を始めて二週間。周囲(主に国木田さん)から向けられていた警戒も打ち解け、この人達の輪に少しずつ入れるようになっていった。
私は時折会社の手伝いの一貫で買い出しに出るが、立場上一人で行くことはない。だから大抵は中島さんが一緒に来てくれる(最初は気まずいし嫌だったけれど、最近はそれなりの会話は交わせる)。
午後、やることを全て終えてしまってどうしたものかと悩んでいると、国木田さんに声をかけられた。
「A、ちょっと買い出しを頼んでいいか?」
「はい、分かりました。では着替えてきますね」
「嗚呼。……む、敦は今日は別の案件か」
国木田さんの言葉に思い出す。そういえば中島さんは、鏡花と一緒にどこかの企業に出向いていた。
国木田さんが困ったように辺りを見渡すと、丁度医務室から与謝野さんが出てきたところだった。
「国木田、医療品で買い足してほしいものがあるんだけど……おや、丁度今から買い出しかい?」
「与謝野先生!医療品の件は分かりました。買い出しなんですが、Aの付き添いが必要で……」
嗚呼、今日は敦がいないからねぇと与謝野さんは呟いた。今日は誰も特別忙しいことはないのだが、谷崎さん兄妹が故あって休みを取っているしやることは普通にある。
「そうだ。これからちょっと時間あるし、妾が一緒に行くよ」
「与謝野先生が?いいのですか!?」
「嗚呼。医療品の買い出し、Aはまだしたことないだろ?色々教える善い機会だ」
ではお願いします、と国木田さんは一言添えると、書類が積まれた机へと戻って行った。
私はいつもの私服に着替えると、与謝野さんのところまで急いだ。
「与謝野さん、今日はよろしくお願いします」
「此方こそよろしく。全く、そんなに畏まらなくていいのにねぇ」
アンタは変なところで厳格で国木田に似てる、と与謝野さんは笑った。……私と国木田さんはとてもじゃないけど似てないだろ、とこっそり思ったのは内緒。
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作者名:ふわふわありす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/inotaku093312/
作成日時:2023年11月16日 21時