風邪 ページ8
sideフリード
パルデアへと向かう航空中にミーティングルームで話し合いをしている時だった。マードックが持ってきたドーナツを食おうとした時、隣に座っていたAの身体が大きな音をたて床へと倒れる
リコ「A……さん！」
ロイ「Aが倒れたぁあ！」
マードック「どうした！」
オリオ「なになに！」
モリー「落ち着きなって」
慌てる4人をモリーが宥めるのを横目に俺は倒れたAの腕を肩にかけ立ち上がる。耳元で聞こえる呼吸が荒い……風邪だ
「悪いが部屋に連れて行く」
モリー「救護室じゃなくて良い？」
「あぁ、部屋の方が良い」
問いかけたモリーにひと言返し、後の事はマードックに任せてAを連れて部屋へと足を運ぶ。話すのも辛いんだろう、何も言わずに黙ってついてくるAを部屋まで運んだ俺は、そのままベッドに腰を下ろさせた
「バンザイしろA、バンザイ」
『……あつい…』
「分かってる。だから早く着替えて寝よう、手伝ってやるからバンザイしてくれ」
もう一度同じ事を言えばAはゆっくりと両手をあげた。俺は素早く服を脱がせて、コイツが寝る時に着ているインナーを着せてやる。下はいい、上は窮屈そうだから着替えさせた。着替えが終わればAは俺が言うよりも先にぐったりとベッドへと倒れ込む
『…ごめんな…』
「良いから」
力無く言ったAに掛け布団をかけてやれば、不意に腕を掴まれた。顔を向ければ蒼の瞳が真っ直ぐと此方を捉えていて、不安そうなその表情に思わず口元が緩む
『……フリード』
「ん、分かってるよ。アイツらに話してくるから、その間くらいは我慢出来るだろ？」
『…フリードォ……』
「うぐっ……」
眉を下げしゅんとした表情で名前を呼んでくるAに言葉を詰まらせる。コイツは風邪を引くと、やたらと甘えてくるのだ…まぁ人間弱っていれば誰だってそうなんだろうけど……普段甘えなんて事は絶対しないような男だからこそ、甘えてくれるのが嬉しいとも思ってしまう
「…分かった、分かったよ。話すのはスマホロトムでも出来るし……だけど良いか、話終わるまでいい子にしててくれよ？その後はして欲しいことしてやるから」
『……頭なでて』
「ん、分かったから……ちょっと良い子にしててくれ」
掴まれた腕を柔らかく外してAの額にかかった前髪を軽く撫でて言えば、苦しそうだったA表情が微かに綻んだ
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作者名：アメ玉 | 作成日時：2023年6月3日 22時
