両想い ページ30
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2人で来たのは、駅の近くにある公園。
もう暗いから人も全然いない。
私たちはベンチに座るものの、沈黙が続く。
「…Aに言わなきゃいけないことがあって」
だいぶ長い沈黙を破ったのは、三ツ谷くんの方からだった。
彼は遠くを見つめながら話し始めた。
「…この前のこと」
『は、はい…』
私の告白のことだ。
「俺、不良だし…。多分Aのこと傷つける。というか絶対。実際傷つけた。この前はたまたま運が良かっただけで、俺と関わると碌なことがないと思う」
「だからごめんな」と静かに謝る三ツ谷くん。
ピアスが光る彼の横顔はとても真剣で、本心で言ってくれていることがわかる。
『(……どう、答えればいいんだろう)』
ここまで決意が堅いと私もなんとも言えない。
『(傷つく、傷つける…)』
確かに、怖い思いをした。
願うなら、もうあんなことは起こって欲しくない。
でもそれが、彼のせいだとも思えない。
マイキーくんやドラケンくんもそうだけど、不良ってなんか、こう、想像していたのより違う。
もっと、かっこいい存在なんだって私は思うの。
『…守ってくれなくていいよ』
そうボソリと言うと、目を丸める三ツ谷くん。
『私がなりたい関係は、守る守られるとかそういうのじゃなくて、恋人っていう唯一無二の関係。一緒に笑って、たまには喧嘩して、私は得意じゃないけどお裁縫とかお料理とかしながら三ツ谷くんと一緒にいたい。不良だからじゃなくて、三ツ谷くん自身が好きなの』
何故か、スルスルと言葉が出てきた。
三ツ谷くんは、とても驚いた顔をしていて、すぐに真剣な顔に戻る。
「…俺も。俺も、好き」
そう、ハッキリ聞こえた。
「俺も、Aとはそういう関係がいい」
ギュッと手を握られて、胸が熱くなる。
顔、赤いだろうな。
三ツ谷くんも、少し頬が赤くなってる。
可愛いな。
『両想いだ!』
「ッハハ…」
彼に勢いよく抱きつくと、三ツ谷くんは控えめに抱きしめ返してくれた。
なんとなく、彼らしいなって思った。
『あの、これからよろしくお願いします』
「こちらこそ」
「なんだこれ」と2人で笑い合う。
『(…この時間が、ずっと続きますように)』
そう願いながら、私は抱きしめる力を強くした。
-end-
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水原カノ(プロフ) - 釉夢さん» えー!ありがとうございます!(*^^*)がんばりますっ! (2021年9月18日 15時) (レス) id: e0da8650d9 (このIDを非表示/違反報告)
釉夢(プロフ) - じゅ じゅつの作品から飛んできました! 夢主ちゃん天然でかわいいですね!投稿頑張ってください! (2021年9月16日 22時) (レス) id: 04e2962a49 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水原カノ | 作成日時:2021年9月16日 21時