第六百八十一話:病院にて 9 ページ25
〈side 朋子〉
仗助「…あ、おねーさんのコト、聞き忘れてた。」
朋子「あらなぁに?あの男の子、悠ちゃんのお友達なの?」
わかってるわ。わかってるわよ。
いくらなんでも、病人を…しかもこんなに小さな子を、わざわざ飛行機に乗せてきただなんて……。
親としておかしいことくらい、私にもわかってる。
仗助「知らねーけど、何回も『ハル』って言ってたからさあ。」
悠ちゃんは、たぶん仗助に出来た、はじめての年の離れたお友達なのよ。仗助も悠ちゃんにこだわっているし、かなり懐いてるんだと思うわ。
けどね。
あの子とは、たった一度会ったきりなの。
朋子「…仗助、今は具合は悪くないの?」
仗助「気持ち悪いけど、今は歩ける。」
仗助のこの謎の病は、症状に波があるみたいだった。
今みたいに「楽」な時は、倦怠感は伴うけれど、歩けるし、普段のように過ごせる。
けど、この「楽」な状態のすぐ後には、いつも仗助はひどく苦しんでいるの。
なにかにうなされるように、夜を怖がっていた。
朋子「…明後日にはおじいちゃんも来るわ。仗助、頑張ってね。」
仗助「? 何をだよ。」
わかってるのよ。
たった一度きり会っただけの、名前以外は何も知らない女の子。そんな他人のために、仗助が命を投げ出す必要が無いってことも。
仗助「…ゲホッ、うっ…ゔぇっ……」
朋子「仗助っ!」
けど、行動せずに後悔させるくらいなら、この子が後悔しないような道を選びたかった。
だって、それをサポートするのが、親ってモノでしょう?
朋子「ほ、ほら!袋もあるわ、背中もさすってるから。怖くないからね、側にいるからね……。」
ごめんね仗助、私は出来の悪い親なのかもしれない。
本当なら、あなたの身を一番大切にしてあげなきゃいけないのに。これだから、感情的なのっていけないんだわ。
仗助「う………」
朋子「よしよし、大丈夫よ…。」
一人でこの子と向き合うのが、無性に怖いと思った。
もし仗助がこのままいなくなってしまったら。そう考えると、涙で前が見えなくなるわ。だから怖いの。
それが嫌で、こんな時なのに、私はどこかであの人の陰を求めていた。
朋子「………ジョセフ……。」
…今は、あの人のことを考えている時間は無いわ。私がすべきことは、何がなんでも、私の思う「親」としての役割を果たすことだもの。
あの人の名をつぶやいた私を、仗助はただ不思議そうに見上げていた。
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サナ - 前の誰かに教えてほしくて13で、まさかの、推しに告られるとは………。びっくりです。(この作品最近ハマってますっ!キュウべえさんの作品まじ神っ!!) (2022年8月13日 13時) (レス) @page11 id: d7d01d7c2d (このIDを非表示/違反報告)
キョウべえ(プロフ) - ピーカンパイさん» わ〜!ぜひぜひ仲良くしてほしいです!ゼペット……すみません、流行に疎くて、よくわからぬのです。いつもありがとうございます! (2020年7月11日 19時) (レス) id: f69dbdccac (このIDを非表示/違反報告)
キョウべえ(プロフ) - こけし@黒死牟さんはロリさん» ぜひお願いします…DIO様をチャチャッと倒しちゃってください!旅行か〜、そういうお話も楽しそうです! (2020年7月11日 19時) (レス) id: f69dbdccac (このIDを非表示/違反報告)
ピーカンパイ(プロフ) - のりぴいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいあとのりぴーの誰かに教えてほしかったのところで(最高すぎて)昇天しました。キョウべえさんのせいです。おわびに友達に(((ゼペットっていうゲームしましょ((( (2020年7月10日 17時) (レス) id: 72c8a4a708 (このIDを非表示/違反報告)
こけし@黒死牟さんはロリ(プロフ) - DIOチャンは私が倒す みんなは幸せに 旅行でもイキナサァイ (2020年7月8日 16時) (レス) id: ae1e4ed40f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:キョウべえ | 作成日時:2020年7月5日 6時