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「すぐに断らないってことは、可能性あるってこと？」
そんな子供のように見つめないでほしい。
『…分からない。』
シャルのことも、私自身のことも分からない。
その一言だけ言って黙っていると、キルアは重ねた手をギュッと握った。
「返事はいつでもいい。…今日は帰ろう。
送るよ。」
キルアは私の手を握ったまま立ち上がったので、自然と腕が上がった。
『え…。』
「何間抜けな顔してるんだよ。
今日は帰ってゆっくりしな、ね？」
ああ…この人はずっと優しい。
キルアは、一緒に電車に乗ってくれ、アパートの下まで送ってくれた。
電車に乗る前には断りを入れたのだが、「一人にはできない。」と言って、結局ここまで来てくれた。
『今日は何から何までありがとうね。』
「本当に気にすんな。
てか、夜ご飯食わなくて大丈夫か？」
キルアは気を使って誘ってくれたのだが、食欲がないので断った。
私はお腹に手を当て、微笑んだ。
『うん。
本当に食欲ないし大丈夫。』
「そっか。無理するなよ。
…じゃあ帰るわ。また連絡する。」
『本当にありがとう。』
「おう。」
キルアはニカッと笑いながら手を振り、背中を向けた。
曲がり角で彼の姿が見えなくなったのを確認して、アパートの階段を上がった。
一番上に来た途端、すぐに視線を移した場所はシャルの部屋。
ドア横の小窓からは一切光が漏れておらず、部屋の中が真っ暗ということを示していた。
つまり、まだ帰ってきていないということだ。
まだ陽菜さんのところなのだろうか。
手術は無事に終わったのだろうか。
終わって、2人でお茶でもしているのだろうか。
あの場所に来ているなんて露知らず、私は嫌なことばかり考えていた。
ため息をついて部屋に入り、そのままベッドに倒れ込んだ。
顔を横に向けると、ベッドの上に転がっているプレゼントの袋。
見ているだけで感情がぐちゃぐちゃになり、雑にそれを払い除けた。
ガサッと音を立ててベッドから落ちたが、拾う気も起きない。
明日から大学は、年末年始の休みになる。
30日ぐらいに実家に帰ろうと決めていたが、隣の部屋にシャルがいるってことを考えただけで辛いので、明日から帰ろうと決めた。
もう、どうでもいいや。
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作者名：きなこもち | 作成日時：2021年5月2日 11時
