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【Aside】
「落ち着いたか？」
『うん、ありがとう。』
ぬるくなったカフェモカを一口飲むと、キルアは安心したように微笑んだ。
至れり尽くせりで申し訳ない。
『…陽菜さんはシャルの元カノで__「いや、待って。」
話そうとすると、キルアは私の言葉に自分の言葉を被せてきて止めた。
目を丸くすると、「大丈夫なのか？」と聞いてきた。
泣いたおかげで落ち着いたのか、私は至って冷静だった。
『大丈夫だよ。
…陽菜さんは元カノで、さっき言った通り、陽菜さんのお父さんが倒れたから、シャルは病院に行っている。』
「いや、うん、まぁ…それは分かったんだけど…。
何でアイツが行かないといけないんだ？」
『陽菜さんの家、父子家庭なんだって。
だから、陽菜さんがひとりだからって…。
それ以上は分からない…。』
「そんなこと言ったら、Aだってずっとあの場所でひとりだったじゃん。」
そうなんだよキルア。
私はあの場所でずっとひとりだった。
寂しかった。
シャルに会いたかった。
でも、シャルは来ない。
『私…私は…シャルの何なんだろうね。』
冷静になったはずの私は、どんどん気持ちが落ち込んでいった。
太ものの上で拳を握りしめる。
「なぁ…この場で言うのはアレだけどさ…。
…アイツじゃなくて、俺にしない？」
『え？』と言って顔を上げると、キルアは大真面目な表情をしていた。
「この前久しぶりに会って、やっぱりAのことが好きなんだって分かった。
彼氏がいるから諦めるしかないかと思っていたけど…。
俺ならAのこと泣かせない。
だから、俺にしないか？」
キルアはそう言い、太ももの上に置かれている私の手に自分の手を重ねた。
心臓がうるさく鳴り、伝わってしまうのではないかと思った。
本来ならここで、��シャルがいるから。��と言わなければならない。
でも、言えなかった。
シャルのことが分からないから。
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作者名：きなこもち | 作成日時：2021年5月2日 11時
