一目惚れ ページ7
コンコンッ
ｼｬﾙ「入るね。」
返事がないと分かっていてもノックはきちんとした。
ドアを開けるとベッドに腰掛けて俯いて震えている少女がいた。
ｼｬﾙ「(どうしたものか。)」
ポケットに何かお菓子とか入ってなかったかなと探り出した時、ずっとポケットに入っていたアンテナを一本落としてしまった。
カランッという乾いた音を立てる。
その音を聞いて少女は少しだけ顔を上げた。
それを俺が見逃すはずもなく素早くアンテナを拾い上げて少女が見える位置にアンテナを持ってくる。
少女はアンテナをガン見していた。
ここまで興味をしめすものはこれが初めてだった。
しかも20秒以上顔を上げることが初めての反応である。
内心驚きつつ、俺は少女にアンテナを渡した。
少女は恐る恐るアンテナに手を伸ばすと優しく掴み、凝視する。
その少女の目はキラキラしていて、まるで不思議の国にやってきた主人公のようだった。
ｼｬﾙ「(意外だな。無機物に興味を示すとは。)」
不思議に思いながらもキラキラと光らせる瞳の少女のことを少し可愛いと思ってしまった。
ｼｬﾙ「気に入ったの？
よかったらあげるよ、それ。」
と言うと、少女は遠慮がちに笑った。
初めての笑顔に俺の心臓がドクンと跳ねた。
初めて俺に向ける笑顔や優しそうな顔は今までのどんなお宝よりも美しかった。
これが一目惚れというやつなのか。
俺にはわからなかった。
感情は悟られぬように軽く深呼吸をして、笑顔で少女に近寄る。
少女はやはり警戒していたがアンテナのこともあってか、少しだけ緊張が解れていた気がした。
ｼｬﾙ「君、名前あるの？」
そう聞くと、少女は首を横に振る。
ｼｬﾙ「そっか…。
じゃあ名前ないと不便だしこっちで決めちゃってもいいかな？」
それを聞いた彼女はこくりと頷いた。
ｼｬﾙ「うーん、どうしよっかな。
あ、そういえば団長のお気に入りの小説にAって名前の子がいたな。
ということで、“A”はどうかな？」
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作者名：きなこもち | 作成日時：2021年4月16日 17時
