4話 ページ5
アーサーがテーブルの椅子に座ると、フランシスは呆れたようにシチューを5つテーブルに置いた。と同時に、上の階から騒がしい音が聞こえてくる。
「ロヴィー！」
「ちぎゃぁあああ！ おおお驚かすなよコノヤローが！！」
「ヴェェアントーニョ兄ちゃん、抱き着くのは良くないと思うよ……」
何が起こったのか非常に分かりやすい会話だが、それ故にアーサーとフランシスは怒りを覚えた。
「ちょっと、あまり大きな声ださないでよ！ 近所迷惑でしょ！」
フランシスが上に怒鳴れば、「ごめん、でもロヴィの仕事が終わるまで少し待ったって！」とアントーニョの声が返ってくる。どうやらロヴィーノの仕事をキリの良いところまで終わらせる気らしい。
「まったく、もっとマシな方法で呼んで欲しかったわ……あれ、アーサーどうしたの？」
フランシスは困ったように呟いてから、アーサーが黙りこくっていることに気が付き首を傾げた。まあ、だいたい言いたいことは察せるのだが。
「くそ、ロヴィーノ羨ましい……」
ああやっぱりね、とフランシスは呆れ顔で溜め息をつくと、ポツリと呟いた。
「はぁ、"好きです結婚してください"って素直になれば良いのにねぇ」
「はぁ！？ そんなこと言える訳ねぇだろうが！ 考えが飛躍しすぎなんだよ沈め髭！」
今にも殴りかかってきそうな形相のアーサーに、フランシスはクスクスとわざとらしく笑った。
「お兄さんは素直になれない極太眉毛さんにアドバイスしただけですぅ」
このクソ髭ェ、と白目を向いて歯ぎしりをするアーサーに、フランシスは嘲笑う。が、すぐに何かを思うように天を仰いだ。
「……それは、アントーニョが"人間じゃない"から？」
「……あぁまあ、そうといえば、そうだな」
いつも自信に満ち溢れたアーサーが、珍しく歯切れの悪い返事をする。機械であるアントーニョは歳をとらない。彼が機械である限り、アーサーには見向きもしてくれないだろう。
「あっ、でも方法がなくはないぞ」
不意にアーサーが口を開く。話の繋がりが見えずフランシスは苦笑いをした。
「何の方法？ さすがのお兄さんも主語がないと理解できないんだけど」
「決まってるだろ、アントーニョを人間にする方法だ！」
アーサーが自信満々に顔を輝かせれば、ガタンッと誰かが階段から転げ落ちる音がした。
「ヴェ！？ アントーニョ兄ちゃん、大丈夫！？」
ずいぶん派手に転んだのだろう。一瞬家が揺れたような気がした。
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作者名：ほたてろいど | 作成日時：2016年12月3日 22時
