3章1話【古代文明"ムウ"】 ページ22
「すっげぇ……」
第一声は感嘆の声であった。人の身長よりはるかに大きいその門を見て、アーサーはそう言わざるを得なかった。
ここは小さな砂丘。宿泊した村を西に出て、数分歩いたところにある遺跡であった。そして今目の前にそびえ立つ門こそが、エディーニョの言っていた開かずの扉で、アーサー達が目指していた古代遺跡の入口である。
「けどアーサー、これ開きそうにないで」
ぺちぺちと門を叩くアントーニョは、無垢な瞳でアーサーに振り返った。
「アントーニョの力でも無理か？」
「……」
アントーニョは無言で扉に向き直る。真正面に立ち、扉を見据えた。手のひらを扉に当てて、全神経を集中させる。
彼には力を制御する管が全身に通っている。エディーニョはそれを完全にコントロールできていたが、アントーニョはまだ制御の解除すらできない。
力を込めてアントーニョが扉を押しても、やはり扉が開くことはなかった。
「アントーニョ、手応えは？」
「あかん。ピクリともせぇへん」
恨めしそうな目でアントーニョは扉を睨む。開け方が間違っているのだろうか。それとも術で抑えられているのだろうか。
ふとアーサーは扉に何かが掘られていることに気が付いた。ただの凹凸だと思っていたが、何かヒントが描かれている可能性もある。
「なあアントーニョ、お前凹凸の測定ができたよな？」
今は削れてなだらかになっており、扉に何が描かれているか分からない。しかしアントーニョの機能を使えば、はっきりと凹凸を導き出すことができるはずだ。
「うん、まあ、できるけど……」
この機能嫌いなんやけどな、とアントーニョは頭を掻いた。だが主人の命令は絶対だ。やらないという選択肢はない。
アントーニョは瞳を鋭くし、扉を見据えた。彼の緑の瞳が瞬く間に黄金色へと変わる。
「……測定開始。結果を主人と共有します」
アントーニョが瞳を扉に向けたままアーサーの額に手を当てた。そこからアーサーの脳へと神経を刺激し直接伝えるのである(仕組みはギルベルトも分からない)。
アーサーは目を閉じた。アントーニョの手を通じて、彼が凹凸を復元していく様子が脳内に流れ出した。
「……測定終了。続いて"アントーニョ"の持つデータを活用し解読しますか？」
額から手を離し、アントーニョが金の瞳でアーサーを捉える。表情はない。普段は見せない顔に少しドキリとしながら、アーサーは満足げに微笑んだ。
「いや、いい。助かった」
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作者名：ほたてろいど | 作成日時：2016年12月3日 22時
