11話 ページ12
「なぁギルちゃん親分の傷大丈夫やった？」
アントーニョが跡形もなく傷の消えた肘を見つめながら口を開く。言葉のノリの軽さからも彼が怪我に慣れていることが伺える。
「ああ、むしろなぜその程度の擦り傷で俺様の魔力を消費しないといけねぇのか疑問に思うくらいだ」
顔をしかめ、ギルベルトは頭をかく。念のためやで、とアントーニョがへらへらと笑えば、真面目な顔をしていたギルベルトもだんだんと顔を幸せそうにふやかした。
「ケセセ、俺様をもっと褒めろ！ 称えろ！ そして跪け！」
ギルベルトは調子に乗って椅子に右足を置き決めポーズをとり始める。漫画でいうと集中線が付きそうなシーンなのだが、さすがアントーニョと言うべきだろうか。彼はギルベルトに見向きもせずアーサーの方を向いた。
「アーサーもありがとうな」
アントーニョは太陽のように笑う。
「ふん、まあ俺は主人だからな、付き添うのは当然だ」
アーサーが「ふふん」と得意気に胸を張ると、アントーニョは呆れたように、それでいて幸せそうに微笑んだ。
「親分のワガママ聞いてくれてありがとなぁ」
子供をあやすかのようにアントーニョが優しくアーサーの髪を撫でれば、不意打ちすぎる行動にアーサーの顔はボッと火が出るかのように赤く染まる。
「なっ！？ ばばばばぁか！ 俺より少し背が高いからって調子に乗りやがって！」
アーサーがパシッとアントーニョの手を払い除けると、彼は「痛いわ」と涙目で手をさする。だが満更でもなさそうだ。アーサーは顔を赤くしたままアントーニョに撫でられた頭を手で抑えていた。
「あぁ、お前等そういう……」
目の前で繰り広げられた光景を見て、ギルベルトの顔から生気が引いていく。まるで「ひとり楽しすギルぜ……」と言わんばかりの瞳だ。
「あれ、ギルちゃんさっきの変なポーズはもうええの？」
ギルベルトに悪気もなく話しかけるアントーニョにアーサーはムッと口を尖らせると、彼の腕をバシッと叩く。
「おらアントーニョ！ 用が済んだならさっさと帰るぞ！ 主人の命令だ！」
顔をまだ少し赤くしたまま、アーサーはアントーニョに叫んだ。そして彼の返事も聞かずアーサーは家の扉を乱暴に開けて飛び出していく。
「あっ、ちょお待ったってや！」
慌ててアントーニョも走り出そうとするが、次の瞬間、彼の手首をギルベルトが捕まえた。
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作者名：ほたてろいど | 作成日時：2016年12月3日 22時
