いいんですか？ Ren.N (ページ36)

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今思い返すと、私の人生が狂い始めたのは、あの人と付き合い始めてからのように思う。

私の初めての彼氏。心の底から愛していた人。

彼の顔はとても整っていた。街行く人皆が振り向くような、隣で歩くのが申し訳なくなるような、とても綺麗な顔だった。

その上、自分にはもったいないくらい優しかった。

なのに、それなのに…

“ お前その顔でよく生きてられるな ”

いつからだろう、こんな言葉をぶつけられるようになったのは。

いつからだろう、殴られるようになったのは。

ブス、醜い、汚い。そのひとつひとつが私の心を抉った。

それでも、嫌われたくない。捨てられるのが怖い。

優しかった彼をこんな人間に変えてしまったのは私だ。

今なら、間違った考えだと分かる。

でも、あの頃の私にとって、狭い世界で生きる何の取り柄もない私にとって、彼が全てだった。私の唯一の光だった。

毎日投げつけられる言葉、振るわれる暴力。次第に心も身体も壊れていった。

仕事から疲れて帰ってきても、布団に入れば頭が冴えて少しも眠れない。ご飯も喉を通らない。

おかしいと頭では分かっている。しっかりしなければ彼に捨てられてしまう。

でも、どうしたらいいのか少しも分からない。

どうしよう、どうしよう。

そんな生活が続くうちに、私は家の外に出られなくなった。

だって、皆が私の顔を指さして笑うから。

自分の醜い顔を見るのが怖い。

鏡を片っ端から割り、反射して顔が映るようなものは全て捨てた。

自分の身体の隅から隅まで汚れているような気がして、暇さえあれば何時間でも風呂に入った。

昼夜が逆転してしまい、瞼が重くなってくるのは朝日が顔を出す頃。世界が動き出す時間だった。