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「 おはようございます。点滴交換しますね 」
永瀬さんのいない朝が来るのは、今日で5回目。
もう顔も忘れてしまいそうだ。
うそ、うそ。誰があんな芸術品みたいな顔を忘れられるのか教えてほしい。
「永瀬くん、いつもあなたのこと心配してるわよ 」
看護師さんが慣れた手つきで点滴を変えながら、クスクス笑っている。
永瀬さん?インフルエンザだったよな…?
「 絶対言うなって言われたんだけどね、永瀬くんから毎朝電話が掛かってくるの。
『Aさん大丈夫ですか?Aさんまだ退院してませんよね?』って。
こっちがちゃんと見てるっていうのに、心配性にも程があるよね〜。」
白衣の天使は 悪戯っ子のように笑っている。
「 あ、今日 うちの外来に治癒証明証 貰いに来るって言ってたから、明日あたり復帰できるかもね。」
永瀬さんの分の仕事も代わりに請け負っているであろう看護師さんは、そう言い残して 今日もバタバタと病室を去る。ナースって大変なんだなあ。
っていうか、永瀬さんそんなことしてたんだ。自分の体調の心配だけしてればいいのに。過保護だなあ。
永瀬さんのことだから、インフルエンザによって思いがけずできた連休を、謳歌してると思ったのに。
チャラくて、かったるそうで、やる気がないと思っていた永瀬さんは、私のことを誰よりも心配してくれていた。
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作者名:白 | 作成日時:2019年4月20日 12時