いいんですか？ Ren.N (ページ1)

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「あなたここから出られるそうよ」

お局ナースに伝えられたのが一週間前。

で、今、精神科閉鎖病棟を去り、必要最低限の荷物と共に慣れない開放病棟にやってきたわけだけど。

「あ、あ、あの… 」

とりあえずナースステーションに立ち寄ってみると、現れた綺麗なお姉さん。
何か言わなきゃ。何か言わなきゃ。何か …

「あ、きょうから … 」

「もしかしてAさん？こっちよ」

最後まで聞いてくれよと思いつつ、呼ばれるがままついて行く。
たどり着いたのは今までの個室とは違い、四人部屋のドアの近くのベッド。

「今日からここがあなたのお部屋。よろしくね。あ、永瀬さーん！」

はあ、今日から四人部屋かあ。気が重い。
誰だ永瀬って。知り合いに‘ 永瀬 ’が居ないか確認して、私の知り合いは誰も‘ 永瀬’に該当しないことにガッツポーズ！心の中で拳を空高く掲げた。

『あ、こんちわ、今日から担当の永瀬っス。』

な、なんだ、こいつ。

心の中の私がガッツポーズを掲げている隙に奥からチンタラ現れたナース。
見た目からしてチャラそうな、ってか、黒髪でチャラく見えるって相当だぞ。

「あ、はい、よろしくお願いします…」

心の中の私がガッツポーズを思いっきり引っ込めたのを感じた。

輪郭の滑らかな曲線、高く通った鼻、視線を絡め取られたら最後離せなくなるような三白眼。彼の顔は整い過ぎている。
髪にしか向いていなかった視線が目の前の ‘ 永瀬さん ’と重なった途端、そう悟った。

『よろしくなぁ～』

気だるげな関西弁が脳に到達する前に私は叫んでいた。

「ごめんなさい！無理です！やっぱり戻ります！」

精神安定剤の滴り落ちる点滴を引き抜いて、血塗れの腕を晒しながら、住み慣れた閉鎖病棟を目指して駆け出していた。

ようやく思い出した。私にとってイケメンは恐怖なのだ。