いいんですか？ Ren.N (ページ10)

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永瀬さんが顔を上げ、絡まる視線。
今日はベッドから転げ落ちないように気を配りながら、猛スピードで顔を背ける。

「見てません！1ミリも見てません！」

『嘘つくなや！ガン見してたやろ！なんや、俺に惚れてもうたか？』

「はい？」

そいつは聞き捨てならねぇなあ。
誰がこんなチャラくて、かったるそうで、ヒョロヒョロな看護師に恋なんかするものか！！

『ああ、そんなカリカリすんなや。冗談やって。
そうやってムキになるから、からかわれんやで？』

うう、ぐうの音も出ない。悔しいけど、これがまた当たってるんだよなあ。

『なあ、俺ら同い年なんやって。知ってた？』

「知りません」

自分の出せる一番怖い声で、自分史上一番機嫌の悪そうな顔を作って答える。
これ以上私の心に踏み込まれないように予防線を張っておく。

『もう、いい加減機嫌直してや～。敬語辞めへん？どうせなら仲良くしようや。』

何！？ダメージゼロだと …？

「お好きにどうぞ。っていうか、最初からタメ口でしたよね？」

『そうやったっけ？自分も敬語使わんといてな。
あ、そろそろ戻らんと師長に怒られるわ。
じゃあな、“ A”。』

そう言い残してドタバタと病室を出ていった。なぜか、いつの間にか呼び捨てにされてるし。

永瀬さんはいつも私の心にズカズカと土足で入り込
んでくる。

それは、長らく人から隔離され腫れ物にされてきた私にとって、とても新鮮で、ほんの少しだけ心地が良かった。