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story10 ページ10

途端に勢いよく顔をあげ、俺の顔を直視する翔さんの目は驚きに見開かれ、切なげに下げられた眉が彼の心情を代弁していた。

「和…だめだよ…」

そう力なく呟きながら俺の手を強く握り返すと、ふるふると頭が左右に揺れる。

「これ以上、ここに囚われる必要はないんだよ?和にはこれから沢山の可能性が…」
「翔ちゃんは!!」

尤もらしい理由で諭すように語りかけるその言葉を、気づけば半ば怒鳴るように遮っていた。

「翔ちゃんは…良いの?このままここが無くなって、今までの日々も無くなって、このまま俺たちの繋がりが無くなっちゃっても…なんとも思わないの?」

本当は翔さんの口からただ一言、俺も嫌だよって聞きたかったんだ。
なんて欲張りなんだろうね?
自分と同じ気持ちだったら嬉しいのにって、思ってしまうなんて。
その言葉が聞けなくて、挙げ句の果てに俺のことを思って言ってくれたその言葉に、少しばかり苛立ってしまうなんて。

大袈裟だって笑う?
電話だってメールだって、沢山の物が便利になったこのご時世に、ここでしか繋がりを感じれない俺を。
文明の利器に頼らず、会うことに意味を求める俺を。

そんなの知ったことか。
俺にとっては今も昔も変わらず大事な場所で、大事な時間なんだ。
例え翔さんがなんとも思っていなくても、俺のこの気持ちは変わらない。

だからお願い。
囚われてるなんてそんな言葉で、この気持ちを否定しないで。

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作者名:ガナッシュ | 作成日時:2018年1月21日 1時

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