触れて、感じて (ページ32)

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「折角2つあるんだから、欲張ってよ」

一呼吸置いて届いた、澄んだ彼の声が俺を揺さぶる。

「翔ちゃんは、我儘言って良いんだよ」

心を、揺さぶる。

「…っ」

我儘を言うなんて、そんなこと。

出来なかったから。
したくなかったから。

なのに君は、そう簡単に言えてしまうんだ。

“俺には我儘を言って良いんだよ”って。

居場所をくれた、感情を受け止めてくれた。
それだけじゃなく、もっと沢山の物を抱きしめようとしてくれる彼は、俺の存在そのものをどこまでも肯定してくれる。

…つくづく思うよ。

敵わないなって。

「和くんって、ほんとずるいや」
「その言葉、そっくりそのまま返すよ？」

そんなことを言いながら2人してくすくすと笑いあって、夜風に揺れた髪が、地面に落とす影の形をも楽しげに変えた。

「ほら、翔ちゃん」

再び、和くんが2つの小包を目の前に差し出す。
そうすれば、掌の上で事の行く末を見守るように、ひらひらとリボンが揺れる。
1つ息を吸って、彼の表情を確認すれば、弧を描いた唇が静かに俺の返事を待っていた。

「どっちも」

1歩分和くんへと近づき、小包ごと包み込むように2つの手に自分の手を重ねた。
小ぶりなそれらはすっぽりと2人の手の間に収まり、少し触れた彼の身体の一部から体温を感じる。

「どっちも、ちょうだい？」

「もちろん」

にっこりと微笑んだ彼が、こつん、とおでこをくっつける。
きっと、頭を撫でる代わりに。

「また1歩、進めたね」
「…うん、和くんのおかげ」

彼が触れた部分から、じわりじわりと解けていく。
1歩、また1歩と、進めるようになっていく。

1人じゃ、出来なかったこと。
和くんとだから、出来たこと。

「ほら、開けてみてよ」
「…じゃあ、遠慮なく」

最初に選んだのは、さっき選び損ねた右手のプレゼント。
優しく手に持ち、自分の手に乗せる。

「お、翔ちゃんお目が高いね」

戯けたように言う和くんの楽しそうな声に、こちらも段々と楽しくなってくる。

「どっちに何が入ってるか分かるの？」
「いや、分かんない」

即答だった。

「なにそれ」

こみ上げる笑いに、肩が揺れる。
それに合わせて揺れる指先で掴んだリボンをしゅるりと解き、静かに蓋を開けると見えたのは。