触れて、感じて (ページ30)

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奥さんの笑顔を見て、誰かの役に立てたんだと、とても幸せな気持ちになった。
そして、あの場所はやっぱり、“誰か”と“誰か”を繋ぐ、素敵な場所なんだと改めて実感した。
人でも物でも記憶でも…全てがあの場所には詰まっている。
そのおかげで、俺も…。

「翔ちゃん？」

突然無口になった俺の顔を、どうしたのかと覗き込む和くん。

「ふふ、なんでもないよ」

不思議そうな顔をしている和くんに笑いながらそう言って、風になびく柔らかい彼の髪に、そっと触れた。

「あの場所が大好きだなって、思ってただけ」

そして、ありのままに思ったことを口に出してみた。
大好きなあの場所のことを、大好きな和くんへ。

「そっか」

目を細めて控えめな笑顔を浮かべた和くんが、俺の手をとり指を絡めた。
まだ慣れないこの行為に、ゆっくりと鼓動が早まっていく。
このドキドキが、手から伝わっていたらどうしようなんて、子供でも考えないようなことを気にしていると。

「俺も同じこと思ってた」

そう言いながら俺の目を見つめ微笑む彼は、なんてずるい人なんだろう。

「……嬉しいな」

感極まって、蚊の鳴くような声でぼそりと呟いたこの言葉。
確認する余裕なんて無くて、顔を見ることなんて出来なかったけど、和くんの耳に届いたのかな。

…手が熱いや。