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「わかった、10時半ね」
『うん、…じゃあ、それだけ』
「はい、また明日ね」
『…うん、また明日』
用件だけの短い電話。
それだけでも、こんなにも幸せな気分になれるなんて…
“また明日”か…
早く明日になってほしいな。
ちょうどその時下の階から聞こえてきた母の声に呼ばれ、夕飯のいい匂いに誘われた俺は、部屋を後にした。
「おはよう、和くん」
「おはよう翔ちゃん、はやいね」
時刻は10時ぴったり。
「和くんこそ、はやいよ」
お店の壁によしかかっていた翔ちゃんが、ははっと笑いながら俺の方へと歩み寄ってくる。
「だって、いつも翔ちゃんが俺のことを迎えてくれるでしょ?」
「…うん?」
その真意が掴めず不思議そうに首を傾げる翔ちゃん。
「だから、今日は翔ちゃんよりも先に来て、翔ちゃんのこと迎えたかったんだ。…無理だったけど」
自嘲気味に笑えば、目をぱちくりと動かし、みるみるうちに愛らしく赤く染まっていく翔ちゃんの頬。
その姿に、思わずふふっと笑みが溢れる。
もっと早く来ていたら、翔ちゃんのびっくりした顔が見られたのかな。
そんなことを考えて、じゃあ次はもっと早起きしようって、浮かれて1人先に“次”を期待してしまう。
「じゃ、少し早いけど行こっか」
「そ、そうだね!行こ!」
火照った顔を隠すように俺の横を通り過ぎる翔ちゃんに、堪えきれない笑いを浮かべながらその後ろ姿を追いかけた。
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作者名:ガナッシュ | 作成日時:2018年1月21日 1時