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「どんどん大人っぽくなっていって、成長していく和くんが…遠くに行っちゃうみたいで。あ、こうして和くんもいつかはお店に来なくなる日が来て、この毎日も終わっちゃうんだ…って」
まるでその日の景色が目の前に広がっているかのように、俺の方へと手を伸ばす苦しげな翔さんは、きっとその日も俺に手を伸ばしたかったんだろう。
それなら
掴むよ、今この瞬間。
あの時出来なかった分、強く、いっぱいの想いと一緒に。
真っ直ぐ伸びるその手にするりと指を絡め、もう片方の手でその2つの手を包みこむ。
「でも、こうしてまた和くんは俺の側にいてくれてる。今日は嬉しいことたくさんで、困っちゃうよ」
一度は引っ込んでいたはずの涙が、再び翔さんの瞳を濡らしはじめる。
でもその顔は、とっても嬉しそうにキラキラと輝いていた。
「ごめん、ごめんね…もう1人で勝手に変わろうとしないから」
“大人として見てほしくて早く変わりたかった”俺と、“あの頃のままこの先もずっと変わりたくなかった”翔さん。
いつまでもあの頃のままなんてのは叶わないかもしれないけれど、貴方が望むなら、俺は無理に大人になんてなろうとしたりしない。
さっきまであんなに拘ってたのに、そんなにあっさり考え変えちゃうんだって呆れられるかもしれないけれど、自分のエゴのために大切な人に悲しい思いをさせたくないから。
踏み出せた今、そう感じることができたから。
「だから、また一緒の時を歩んで行こう、“翔ちゃん”」
一際明るく笑う貴方だって、さっきからずっと
「うん…!“和くん”!」
って呼んでたしね。
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作者名:ガナッシュ | 作成日時:2018年1月21日 1時