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「お母さんが本を選んでる時に退屈そうにしてた和くんを、俺が誘って折り紙したよね」
「翔さん下手だったよね、鶴も折れなくてさ、すごい器用そうなお兄ちゃんなのにめっちゃ不器用で…」
「あー、そうだった。和くんがこうやるんだよって教えてくれたんだよね〜!誘った俺が結果的に教えられる立場になっちゃって、恥ずかしかったなあ」
てへへって効果音が聞こえるんじゃないかってくらい恥ずかしそうに笑って、今も昔も変わらない癖で赤くなった頰をかく翔さん。
「それから毎日俺に会いに来てくれたよね。嬉しかったな〜…翔ちゃん翔ちゃん!って俺のあと付いて来てくれて」
全部覚えてる。
すごい優しいお兄ちゃんがいたんだ!またあそこに行きたい!
って、それから毎日学校帰りに1人で来るようになったんだ。
そんな俺をいつも優しい笑顔で迎えてくれたんだ。
「そんな和くんがこんなに大きくなって、男前になって…忙しいはずなのにそれでもまだここに来てくれるなんて…」
今までお店の中を見回したり、目を閉じながらゆっくりと思い出話をしていた翔さんが俺の顔を見て、あの笑顔で優しく笑う。
「ありがとう、和くん」
より一層にこりと微笑み、俺の頭をぽんぽんと撫でる。
昔と変わらず温かい優しい手が俺の頭を包んでは離れる。
ひとつだけ昔と違うのは、手の大きさ。翔さんの手の大きさが変わったわけじゃなく、俺が成長したんだって思い知るのは嬉しいようで、悲しいようで。
大人な翔さんに近づけて嬉しいはずなのに、変なの。
「…ねえ、翔さん」
「ん?どうしたの?」
思い出話に花を咲かせたせいだろうか。翔さんにくっつき回って歩いていた子供だった自分が、大きくなった今、これからどうやって翔さんに接してほしいのかを考えてしまった。
今なら、今だから、一歩踏み込んでもいいかな…?
唐突に、でもずっと思っていたことをぶつけてみようかなって。そんな気持ちになったのは内心焦っていたのかもしれない。
翔さんに子供のままの俺だって思ってほしくなくて。
「…いい加減、くん付けじゃなくて、ちゃんと呼んで?俺の名前」
翔さんの目を見ながらそう告げれば、楽しげに細められていた目が、みるみるうちに大きくなり、くりくりとした瞳がゆらゆらと揺れた。
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作者名:ガナッシュ | 作成日時:2018年1月21日 1時