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和也「Aは、“ 俺の記憶 ” を取り戻したよ。」
俺の言葉を聞いた翔ちゃんは、大きな眼を見開いた。
次の瞬間、顔いっぱい喜びに満ちて……
翔「それは、良かったな！」
和也「うん……」
翔「どーしたんだよ？もっと喜べよ。」
和也「うん。」
嬉しい………はずなんだ。
もっと喜んでもいいはずなんだ。
なのに、何だろう…この気持ち。
もぬけの殻のような感覚。
翔ちゃんは喜びに満ちているのに、
俺の顔は明らかに対称的だった。
和也「翔ちゃん………」
翔「何？」
和也「 “ 奇跡 ” って信じるタイプ？」
翔「は？」
翔ちゃんは、『お前何言ってんの』って呆れた顔をしている。
そりゃ、そうですよね。
唐突すぎて意味不明だし。
俺は、記憶を取り戻した日の出来事を全て話した。
どうやってAが記憶を戻したのか。
気付いたら玄関に立っていた事も。
そして……
“ お母さんの香りがした事 ” を。
翔ちゃんは、両腕をカウンターテーブルに置き、手を組んで俺の話に耳を傾けていた。
横に視線を向けると…
時より顎を指で擦りながら眉間にシワを寄せ、顔をしかめている。
やはり、まだ翔ちゃんには…お母さんの話をするのは早かっただろうか。
だとすると、少し罪悪感を感じてしまう。
智「やはり、お母さん、そっちにも行ったんだね。」
コーヒーを入れ終えた大野さんが、俺の前に置いた。
和也「そっち？」
智「うん。ね？翔くん。」
翔「あぁ。………葬儀の日、智が研究所で母さんを見たって言うんだ。」
和也「え？」
翔「美空が眠っているベッドの側で、切なそうな顔をしてたらしい。」
和也「そうなんだ……」
翔「美空の所なら分かるけど………どうしてAの所にも来ていたんだろ……」
そうなんだよね。
やっぱり不思議に思っちゃうよね。
翔ちゃんは頭に手を置き、考え込んでる様子だった。
どうやら初耳らしい。
翔ちゃんも知らないだなんて……
ますます疑問に思えてくる。
なぜ……おばさんは知ってるんだろう…
娘の身体が、
“ もう１つあるということを ”
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作者名：さくらもち | 作成日時：2017年7月12日 17時
