133: 翔ちゃんのお母さん ページ33
翔「さ………中に入ろうか。」
和也「えっ！？」
え？中に？
お母さんがいるんじゃ？
育てのお父さんから “ 産みの親と再会してもいいと ” 了解を得てるのかな？
翔ちゃんはポケットから鍵を取り出し、玄関の扉を開けた。
鍵が閉まっていると言うことは、どうやら留守らしい。
中に入ってみると薄暗く、とても気持ち悪いぐらい静けさが増していた。
ここ………人……住んでるんだ…よね？
まだ表札はあるし。
みーちゃんはお母さんと一緒に住んでるはず。
翔ちゃんはリビングに入り、ゆっくりと静かに床に座り込んだ……
翔「ただいま………母さん………」
すると、どこからか…風が『ふわっ』と舞った気がした。
翔ちゃんの背中が泣いてるように見えた…
俺は、そんな翔ちゃんをただ見守る事しか出来なかった。
触れてはいけない気がした。
しばらくすると、翔ちゃんは静かに語り始めた………
翔「母さん………。俺の本当の母さん………死んだんだ…………」
和也「えっ？」
翔「一昨日、亡くなってさ…」
和也「………」
翔「すい臓がん……だったんだって。」
和也「…………」
翔「母さん自身、癌だと気付いてなかったらしくて。気付いた時には、もう遅かったらしい………」
知らなかった……
おばさん……亡くなってただなんて
急に聞かされた言葉が頭に上手く入って来ない。
言葉が出てこない。
翔「俺……知らなくてさ…。知ったの、亡くなる直前だったんだ。」
和也「………」
翔「父さんが血相をかえて、俺に伝えに来てさ。『癌だ』って……『危ないから、すぐ行ってこい』って…………」
和也「…………」
翔「急いで行ったら、母さん………ヤツレてて。俺の知ってる母さんじゃなかった。優しくて、いつも笑顔の母さんじゃなかった…。側に行くことが出来なかった……」
和也「…………」
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作者名：さくらもち | 作成日時：2017年7月12日 17時
