おとしもの２：shp ページ46
.
音も無く開いた桐の襖の向こう。
淑やかなスーツと雰囲気によく似合った少し楽しげな柄のチーフ、小綺麗に整えられたその髪は絹みたい。
俺を視界に捉えて少し恥ずかしそうに微笑んだ、ガラス玉のような瞳。
少し華奢な、同い年くらいの青年。
同性同士の結婚なんて今どき珍しくもなんともない。
見合いで同性は少しばかり珍しいが、俺が驚いたのはそこじゃない。
足元がガラガラと崩れる感覚がした。
心の臓が無重力。
あ、なるほどな。
これが恋に落ちる、っていう、感覚。
対面に座っていよいよ心臓は収まりのつかないビートを刻み始める。
目が合ってちょっと首を傾げられればもう俺にいつもの冷静さなんてひとかけらも残っていなくて、自分でも引くほど上気した顔に手の甲を当てて冷ましながらとりあえず落ち着く為に頭の中で山の頂上から下界に向かって叫ぶ。
なるほどなぁ！
京都の！
祇園の！
料亭に！！
恋が落ちとるなんてな〜！！！
そりゃ気付かへんわぁ〜〜！！！！！
…なんて。
やまびこも、全部俺。
そしてこの瞬間、微塵も冷静ではない俺の頭によぎったのはそんな高揚感を全て掻っ攫っていくほどの強いつよい後悔。
あぁ、こんな事になるなら。
こんな所に恋が落ちてるなんて知っていたら。
あの爛れた日々なんて絶対に過ごさなかったんに！
互いの表情や両親の応対を見るに俺達はきっとどう転がっても番になる。
そんなのはどうでもええんや。
いや、死ぬほど嬉しいけど。ちゃうくて。
俺は相手にも、えっと名前は、Aさん。
Aさんにも、この婚姻を失敗だなんて思ってほしくない。
俺と結婚してよかったって思ってほしい……俺に、恋をして欲しい。
だから、だから……あの爛れた日々の事は絶っっ対に！
バレちゃあかん！！！
黙りこくる俺を気にしてかAさんがどうしました？なんて言う。
あぁヤバい、声もすき。
――
―――
――――…
「(髪型と服装違うだけで気付かないんだぴー君…っていうかじゃあ今まで本当に覚えられてなかったって事……？俺はあんなに…うーんさすがに傷付く……)」
Aが決して恥ずかしがっている訳ではなくただ焦っているという衝撃の事実に、浮足立っているショッピは気付く事はなかった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 489人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うぃりあむ(プロフ) - シャム猫さん» シャム猫様、コメントありがとうございます！niさんは登場頻度が少なく中々創作も難しいですものね。かく言う私もキャラの掴みが自信なく不安ではありますが、今後も視野にいれて執筆していきたいと思います！ (2019年11月8日 15時) (
レス) id: 6010886135 (このIDを非表示/違反報告)
シャム猫(プロフ) - コメント失礼します。兄さんが出てきた事が嬉しいです(*^^*)もっと兄さんを出して欲しいなぁ|ω･)初対面なのにすみません(´；ω；｀) (2019年11月6日 23時) (レス) id: 0e68210922 (このIDを非表示/違反報告)
うぃりあむ(プロフ) - 神音さん» 神音様、コメありがとうございます！詐欺師さんとても可愛らしい顔で寝ていて居ても立ってもいられず書きました…！少し前の短編集に掲載したお話ですね、気に入って頂けてとても嬉しいです！是非今後も宜しくお願いします＊ (2019年9月25日 23時) (レス) id: 9df46c5a4d (このIDを非表示/違反報告)
うぃりあむ(プロフ) - 暖炉さん» 暖炉様、改めてリクエストありがとうございました！私としても最推しコンビなので完成まで時間がかかってしまい申し訳なかったです…楽しんで頂けたなら幸いです！是非今後もリクやコメなど仲良くして頂けると嬉しいです〜：） (2019年9月25日 23時) (レス) id: 9df46c5a4d (このIDを非表示/違反報告)
神音(プロフ) - チーノくんのやつこの前のしょーてんネタじゃないですか！！どれだったか分からないですけどtn人狼夢主狂人(両片思い)の話が好きでした！ (2019年9月25日 18時) (レス) id: 7f79e913ee (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：うぃりあむ | 作成日時：2019年8月21日 1時
