天使(仮)の人生は平穏無事とはいかない。結【オリオンの刻印】 (ページ10)

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√44、幸せになろうページ10

「……野坂、くん？」

「Aさん」

「……何？」

「Aさん……」

「だから、何……」

「夢じゃ、ないのかな……」

「……熱いし、夢じゃないんじゃない……かな」

彼の体温が伝わる。
彼にも、私の体温が伝わっているだろうか。

「……Aさんこそ、だんだん熱くなってる。それに……すごくドキドキしてるね」

「！！」

意識してることバレバレだ。恥ずかしい。

と同時に胸が小さいと鼓動が伝わりやすいらしいことを思い出し、勝手に凹み出す私。

「ちょ、離れて」

「僕のこと好きって言ってくれたのに？」

「……まだ恋人じゃないし」

「それは驚いた。この期に及んでまだ僕たちが両思いじゃないと？」

「だ、だって。返事、まだ聞いてない」

「僕の気持ちならとっくに言ったと思うけど…」

「い、色々順序ってものがあるでしょ」

抗議する為に力いっぱい彼を引き離そうとした。
それでも彼は私から離れようとしないけど、そのおかげであるものが視界に入った。

(……あ。耳が赤い)

顔を肩に埋められていて気づかなかった。
なるほど。彼なりの照れ隠しなわけね。
可愛くて笑いそうになってしまった。我慢我慢。

「それでも、ちゃんと言って欲しい」

はあ、とため息をつかれた。それが首筋に触れたのでちょっとビックリしたのは内緒。

「……Aさんて、案外意地悪だね」

「貴方に言われたくない。……ま、そういうところも含めて、野坂くんのいいところなんだけど……」

「どうもありがとう」

覚悟を決めたのか、一旦私の肩から顔を離し、目を合わせてきた。

野坂くんのいつにも増して真剣な表情。それでも顔がまだ赤い気もする。

「好きだよ」

そのあまりにもまっすぐな告白に、私の胸は高鳴った。

「誰よりも君を愛している」

「必ず幸せにする……」

「一緒に幸せになろう。Aさん」

……そこまで言ってもらうつもりはなかったんだけど。

「あ、Aさん照れてる」

「て、照れてない」

「ならこんな時何て言うのかな？素直に返事」

「……っこれからも、よろしくお願いします」

「うん。よろしくね。Aさん」

愛を知らずに育った僕が、こんなにも誰かを愛していきたいと思えるなんて。

そうだ。これから知っていけばいい。

この人となら、きっと。