天使(仮)の人生は平穏無事とはいかない。結【オリオンの刻印】 (ページ9)

今日:4 hit、昨日:12 hit、合計:1,918 hit

√43、一世一代ページ9

今度はAさんの方から、僕をホテルの屋上に呼び出した。

「さっきは逃げ出してごめんなさい」

「ううん。僕の方こそ、いきなり過ぎたなって反省してる」

「あの、私……」

「その前に一つ、いいかな？」

「え？」

「どんな返事を貰っても、君が僕の特別な女性であることは、いつまでも変わらない」

「！」

「君が僕と共に歩んでくれる希望が少しでもあるなら、僕はその時までいつまでも待つよ」

我慢や諦めなんて僕らしくもない。

最後まで戦うと決めたんだ。

幸せは、僕自身の手で掴み取ってみせる。

「何度断られようと、いつか必ず、君の一番愛する男になるから」

それが僕のやり方だ。

「え、あの、私、断ったつもりは、なくて」

「………？でも、さっき「ごめん」って」

「あ、あれは少し席を外しますとか、お先に失礼しますみたいな意味で。あんなにまっすぐ好意を伝えられたの初めてで、びっくりして……」

身体の力が抜け、思わずしゃがみ込む。
同時に笑いも込み上げてきた。

「……てっきり振られちゃったのかと」

「ち、違う！ ……って、確かにあれじゃそう解釈されても仕方ないよね」

「そうだね。全く君って人は……ふふ」

でも、そうか。

振られる為に呼び出されたわけじゃなかったのか。

じゃあ、何で呼び出されたんだろう。

……もしかして、と、淡い期待を抱いてしまう。

「……私、野坂くんの想いに、応えたい」

そして私は、一世一代の告白をする。

「まだまだ、未熟な私ですが……私を生涯、あなたのそばにいさせてください」

野坂くんは私を見上げ、しばし目を丸くした後、立ち上がり、私へと歩み寄った。

「Aさん」

名前を呼ばれた瞬間、温かいものに全身を包み込まれた。抱きしめられたんだ。野坂くんに。