√42、友情 ページ8
はしたないと分かっていながらも走っていると、ホテルの廊下の曲がり角で、誰かとぶつかった。
「杏奈！」
「A……！」
私が捜していた相手だ。
反応からして、向こうも私を捜していたらしい。
「ちょうど良かった、話が……」
「どういうつもり？」
「えっ？」
「野坂くんに告白されて、断ったそうね」
「！ ……断った、というか」
「あなた、野坂くんのことが好きなんじゃなかったの？ ……それとも、私に遠慮でもした？」
Aの肩が竦んだのが分かった。
「そうだとしたら、あなたのやっていることは間違っているわよ。そんなんで譲られても、私は全く嬉しくないもの」
……そもそも、そんなことをしても、野坂くんはあなた以外を選ぼうとはしないから。
「……私も、話があってきたの」
そう言って私を見るAの表情には、何かの決意が見えた。
私にとって、杏奈はかけがえのない親友だ。それはいつまでも変わらない。
親友だからこそ、嘘はつきたくない。
私たちの友情は、こんなことで壊れるようなものじゃないと信じているから。
「……私、野坂くんが好き」
「……うん」
「杏奈は？」
「好きよ。大好き。誰にも負けないくらい」
「私だって好きだよ。この気持ちは、杏奈にも誰にも負けない」
親友と好きな人が同じだからって理由で諦められるものじゃない。私も遠慮なんてしたくない。
「それを伝えに来た」
「……そう」
一見冷たくも聞こえる杏奈の声。
私は意を決して、顔を上げた。
そこにいた杏奈の顔は……
「気が合うわね」
杏奈は笑っていた。
いつもの凛々しい微笑みではなく、年相応の、無邪気な笑みだった。
「というか、あんなに素敵な人だもの。ライバルが多いのは当然でしょ」
初めて見る表情だった。
私は何だかそれが、無性に嬉しかった。
嬉しくて、涙が出た。
「……でも私、杏奈のことも大好き」
「うん。私もよ」
「「だから……」」
お互いどんな結果になっても、恨みっこなしだと、杏奈は笑った。
「ほら、行って来なさい」
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歌姫 - 楽しく読まさせていただいています。アレスの天秤も読みたいのでパスワード教えてもらえませんか？ (7月30日 23時) (
レス) @page15 id: a1c8bee84a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅葉 | 作成日時：2023年7月27日 2時
