√41、進みたい ページ7
(……いや)
これから自分がどうすべきか、答えはもう決まっている。
「………っ」
拳を握り、身体をベッドから起こす。
受け止めなければならない。
そして答えを出すんだ。
私を愛してくれる人に、真正面から向き合いたいから。
でもその前に、私にはやらなければならないことがある。
杏奈side
「好きです。ずっと前から野坂くんのことが」
生まれて初めての告白をした。
恐らく、もうこんなに素敵な人には出会えないんだろうなってくらい、魅力的な男性に。
そんな好きな人に、私はこれから、振られる。
「……ごめん。好きな人がいるんだ」
「ええ」
不思議とショックではなかった。
野坂くんの気持ちにはとっくに感づいていたからだろう。初めて気づいた時は、流石に少し落ち込んだけど。
だから今日私は、この想いを断ち切る為に来た。
「野坂くんの好きな人って、どんな子？」
「前に話したよね。僕の過去のこと。僕はずっと過去に囚われていたんだと思う。でも、無理に忘れなくていいんだって思った。全て受け入れて、僕も前に進もうって」
そう話す野坂くんの表情は、心なしか楽しそうに見えた。
「そんな勇気をくれる子だよ」
……そうね。
だから私も、あの子を見て、前に進みたいって思ったのよ。
だから……。
「……ごめんなさい、今だけだから」
私は、これまで抑えてきた涙を流した。
野坂くんは何も言わず、見守っている。
「……どうやっても、私のことを選んでくれることは、ない？」
「うん」
その言葉に、揺らぎは一切ない。
ああ、それを聞けただけで、満足だ。
「何度振られても諦められないほどに、好きなんだって気づいたから……」
「……振られた？」
野坂くんの表情に、少し曇りが見えた。
もしかして……本当に振られたの？Aに？
「そ、そんなはず、だって、Aは貴方のことが……」
「え？」
「……いえ、何でもないわ」
私はただただ困惑していた。
「返事、聞かせてくれてありがとう。失礼するわ」
私は走り出していた。Aの元に。
振った？
何を考えているの。
A、あなた、あんなに……
野坂くんのこと、愛しそうな目で見ていたくせに。
なのにどうして嘘をつくの。
そういえば、Aが自分の気持ちを閉じ込めるのは、いつだって他人の為だった。
私はある結論に至った。
……もしかして、私の気持ちに気づいたんじゃ。
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歌姫 - 楽しく読まさせていただいています。アレスの天秤も読みたいのでパスワード教えてもらえませんか？ (7月30日 23時) (
レス) @page15 id: a1c8bee84a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅葉 | 作成日時：2023年7月27日 2時
