√40、親友か、好きな人か ページ6
ホテルのベッドで横になっていると、綺麗なノック音が鳴った。
「ちょっといいかな？」
野坂くんの声だ。
驚いてベッドから跳ね起きた。
話があると、ホテルの屋上に連れてこられた。
「話って、な……」
「好きなんだ」
時間が止まったように思えた。
自分たちの周囲はとめどなく時間が進んでいるのに。
だがそんな周りの喧騒は、今のAの耳には届いていない。
「ずっと君が好きだった。そして今日、より君が大好きになった」
鼓動が早まる。
顔も熱くなる。
「僕と付き合ってくれない？」
ひしひしと伝わる、野坂の真剣さ。
彼がそのような嘘をつく人間じゃないことくらいは、よく分かっている。
「ああそっか！仲間としてね！うん、私も好きだよー」とか、そんな言葉で誤魔化せるほど、私も馬鹿じゃなくなったのだろうか。
それとも、彼のことを少しずつ分かってきたのだろうか。
彼が私に、歩み寄ってくれている。
「………えぇっ！？」
状況が全て把握できた時には、自分でも聞いたこともない声が出ていた。
感じたことのない熱が身体を侵していく。
あんな風に、面と向かって愛を告げられたことなどなかったから。
「返事、待ってる」
そう言い残し、野坂は踵を返した。
どうしよう……
すごく嬉しいって、思っている自分がいる。
しかし。
思い出すのは当然、杏奈のことだった。
杏奈が聞いていたらどうしようとか考えて、いるはずもないのに辺りを見回す。
「……ご、ごめん……！」
いたたまれなくなって、私は思わず走り去っていた。
野坂を追い越し、部屋へと駆け戻る。
部屋に戻ると、ベッドにダイブする。
枕に顔を埋め、考えた。
どうしたらいいの？
野坂くんは、親友の好きな人。
じゃあ、私にとっては……？
「杏奈の恋を応援したいと思っていたのに、これじゃあ……」
……私が引き下がれば、何の問題も無くなるのだろうか。
でも、私に気持ちを伝えてくれた野坂くんの気持ちは？
私は杏奈とどうなりたい？
野坂くんとどうなりたい？
私、きっと野坂くんが好きなんだ。
じゃなかったら、こんなに胸の奥が痛むことも、悩むこともない。
「……でも、杏奈のことだって」
杏奈は、私が東京に来て初めてできた親友で、私が好きな人に振られて悲しんでた時に励ましてくれた恩人で。
そんな人の悲しむ顔なんて見たくない。
私が選べば、必ず誰かが不幸になる。
親友か、好きな人か……
私は、どうしたい？
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歌姫 - 楽しく読まさせていただいています。アレスの天秤も読みたいのでパスワード教えてもらえませんか？ (7月30日 23時) (
レス) @page15 id: a1c8bee84a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅葉 | 作成日時：2023年7月27日 2時
