天使(仮)の人生は平穏無事とはいかない。結【オリオンの刻印】 (ページ4)

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√38、本当に欲しいものページ4

「良かったな」

と、プレゼントされた花を見て浸っている僕に声をかけるベルナルドさん。

「……羨ましいんですか？」

「子供相手に嫉妬などするか」

よく言う。全身から苛立ちオーラが溢れているのに。

「……ステージ上で何を話していたかまでは聞こえんかったが、Aは凄いだろう」

この人も何となく、僕の事情を察していたようだ。
というか自分彼女のこと分かってますよ感出すのはやめてほしい。

「君の表情に、先程と今とじゃ天と地ほどの差があることから明らかだ。それほどまでに、救われたということだな」

……そんなに顔に出てただろうか。不覚。

「気持ちは分かる。私のその一人だったからな」

……ベルナルドさんにもかつて、大きな苦悩があったという話は聞いていた。
正直話に聞いただけでは、信憑性に欠けると思っていたが。

「……信じられないか？私だって、全てを手に入れられるわけではないぞ。どれだけ金や地位に恵まれたところで、それだけでは幸せとは言えないからな」

その言葉には重みがあった。

「本当に欲しいものほど、手に入らないものだ」

同感だ。

「……貴方も苦労してたんですね」

そうとも知らず、勝手に恵まれてるとか狡いだとか決めつけて、内心疎んでしまった。反省しなければ。

「しかしだからこそ、一番欲しいものは、自分自身の手で掴み取りたいと思ったんだ」

ベルナルドさんは僕の方を一瞥し、冷たい目で僕を見下ろし、言った。

「子供に負けるつもりはない」

「……僕も、狡賢い大人に負けるつもりはありませんよ」

僕達は似ている。
一番大切なものを、欲しがっているだけなんだ。

大好きだって……愛してるって、たったそれだけの言葉が欲しくて、もがいていただけなんだ。

何やら話し込んでいる二人を遠目に、私はホッと一息ついた。

「良かった～。仲良くなったみたいだね」

「僕にはまだ火花が散って見えるけど……」

フロイはそう言うが、あの二人は最初よりも表情が生き生きしているように見える。会話の内容は届かないが。

「まあ、前より和解できたのは本当のようだね。…さすがA」

「私は何もしてないよ」

二人が互いに歩み寄る努力をした結果だ。