特別√、紀村陽介 ページ14
「さあて、なかなかない西村さんとの二人きりの機会だから、今のうちに色々聞いておこうかな」
……わざわざ私を連れ出したのって、取材目当てだったのかな。
「恋人はできた？」
「それ、今の時代セクハラになりますよ」
「大丈夫大丈夫。記事に使うわけじゃないから！」
何がどう大丈夫なんだ。
そもそも私が訴えたら、この人完全にアウトなんだけど、その辺分かってんのかな？
そうとも知らず他の人にまで同じようなことしたら…他人事とはいえ恐ろしくなる。
「まあ、恋人がいるような子が、こんなところに僕と来るわけないか」
「……あの、大人にあんまり偉そうなこと言いたくないですけど、他の子に……特に女の子にこんなことしちゃ駄目ですからね」
「ん？ しないよ？ 当たり前じゃないか」
「ええー……」
振る舞いとか言葉遣いとかは置いといて。
……似てるんだよなあ、やっぱり。声が。
「似てるって、何に？」
「え、声に出てましたか？」
「僕と似ている人がいるの？」
「……あー、はい。声だけですけど」
昔好きだった人と……。
「なるほど、それが西村さんの好きな人か」
この人、エスパー！？
「つまり僕を利用してかつての思い人に思いを馳せていたんだね」
「嫌な言い方やめてください」
よよよ、とわざとらしく袖で目元を拭う紀村さん。こんな愉快な人だっけ。
「冗談はさておき」
「嫌な冗談ですね」
「何にしても、西村さんとここに来れたのはすごく嬉しいよ。君といると、どこで見る光景だって綺麗に見えそうだから」
……こんなキザな人だっけ。
「もう、何言ってるんですか。そういうのは恋人に囁く台詞ですよ」
……こういうところに私を連れて来たということは、紀村さんも恋人はいないのかな。
「紀村さんは、恋人を作ろうとは思わないんですか？」
踏み込みすぎた質問だったかもしれない。でも気になる。
「んー、特に欲しいと思ったこともないしなあ。独り身でも別に寂しくないし、今だって普通に楽しいし」
よく聞く、仕事が恋人、って感じなのだろうか。
「まあそれは、君がいるからかもね」
「え」
「サッカー界には、僕の仕事の延長線上には君がいるから。僕はいつも楽しくやれてるのかもしれない」
「……？」
「君といると……何かこう、落ち着くんだ。そう思っているのは僕だけじゃないだろうけど」
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歌姫 - 楽しく読まさせていただいています。アレスの天秤も読みたいのでパスワード教えてもらえませんか？ (7月30日 23時) (
レス) @page15 id: a1c8bee84a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅葉 | 作成日時：2023年7月27日 2時
